月並みな言い方だけど、楽しかった夏休みも終わり、新学期。

今年の夏は、タケル君とたくさん遊べて、去年の倍以上楽しかった。

…もっとも、去年はデジタルワールドのことがあったから、あまり遊べなかったんだけどね。

で、今日から新学期。

宿題も全部OK。忘れ物ナシ。

ただ1つ、問題なのは…。



<恋は盲目って…本当?>



タケル君と大輔君と、久しぶりの教室に入る。
「おっはよー大輔ー」

すると途端に、クラスメートが、声をかけてくる。

「おーっす…!!」

大輔君は、早々とその友達の所に行ってしまった。

「おはよう。ヒカリちゃん。タケル君」

「おはよう」

次第にクラスメート達が声をかけてきた。夏休み明けで、みんな久しぶり。

そしてそのうち、1人の友達が、私のランドセルを見て、言った。

「あ!ヒカリちゃんこれ、綺麗だね!」

「え?あ…それは…」

8月の3日に、タケル君にもらった、ネックレス。

さすがに学校には首に掛けていくわけにもいかないから、

タケル君と相談して、ランドセルに付けた。

「あれ?タケル君の方にも付いてる…」

「うん。そうお揃い」

タケル君が、すかさず言った。

「お揃いって、おいタケル、今度ばかりは、『友達だから』じゃないだろうな〜」

タケル君の部活仲間が、いつものこと、とでも言うような顔で言った。

「え?そりゃ〜…ヒカリちゃん?」

私は、タケル君が言い出す前に、ほぼ反射的に自分の席へと向かった。

気が付けば、今クラスにいる人は全員私達の方を向いていた。

ここでもし、「付き合ってます」なんて宣言したら、どうなるだろう?

簡単なこと。からかわれてからかわれて…穴以外に居場所がなくなる;


この時から私は、頭のどこかがおかしくなったようで、一日中周りに気を張っていた。


「は〜ぁ。結局、ほとんどタケル君と話せなかったなあ…」

帰宅後。ベッドに倒れ込んで、ため息をついた。

「話せなかったって…ヒカリが自分から避けてたんでしょう?」

テイルモンが、ベッドの柵に腰掛けながら言った。

「だって…みんなが見てちゃ…恥ずかしいもの」

「夏休みの間は、平気で外でいちゃいちゃしてたのにね」

「!!見てたの!?」

「あれじゃあ、見せ物と同じよ」

「///…テイルモンなんか知らない!!」

私は、わざと子供みたいにほっぺた膨らませて、布団の中に潜った。

布団の中は暗くて暑かったけど、穴に1度入ると、出るのは百倍恥ずかしくなる。

少しして、テイルモンのため息が聞こえた。

「なによ…?」

布団の中から、拗ねた声で聞いてみる。

「夏休み、私達といた時は仲良くし(すぎ)てたのに、学校だとなにか違うの?」

「そりゃ…みんな知り合いだし…」

「仲間と知り合いは別?」

「別!…だって、仲間のみんなは、私達のこと、よく知ってるもん…」

「学校のみんなは?」

「みんなは…表面的に、話してるだけだから…」

一緒に冒険をしたわけじゃない。そもそも、学校外で遊ぶことも、そんなに多くない。

「本当に?知り合い、なだけ?」

「う…ん」

「だったら、どうして恥ずかしがるの?」

「え?」

「知り合い程度なら、通りすがりの知らない人と、そんなにかわりはないでしょう?」

「……」

公園でタケル君といる時にすれ違った人。その人達は、自分たちとは、関係ないから。

でも、クラスメートは、関係ある。知り合いだから。話しとか、しているから…。

「私はね、ヒカリ。学校の人たちが、正直言うと、うらやましい」

「…どうして?」

「ヒカリと、いつも一緒にいるから。私達は、いつも影からしか見ていられないから…」

「ぁ…」

たとえデジモンが世界中に知れ渡っても、学校には連れて行けない。ペットを連れてきちゃ行けないのと同じなんだって。

「ヒカリ、いつも楽しそうだよ。みんなと話してる時。…たしかに、仲間達といる時の方がもっと楽しそうだけど、

でも、学校の笑顔だって、嘘じゃ、ないでしょ?」

「…うん」

そうだよね…。みんな、知り合い、じゃない。友達、だもんね。

冒険はしてなくても、学校での私しか知らなくても、みんな、友達…。

からかったりしても、きっと、それは祝福の意味を込めて。

…そりゃ、祝福されても恥ずかしいけど…;

でも、みんなが応援してくれるなら。きっとそれは楽しくなる。

「テイルモン…」

「なに?」

「さっきは、ゴメンね」

私は、布団から出た。

また明日、恥ずかしくて穴に入っても、きっと出られる。

「ヒカリ…いいよ。ヒカリがいつもみたいに、元気に笑ってくれれば」

「ありがとう。…私、タケル君に謝りに行ってくるね」

「それがいいよ。タケルだって、きっとヒカリのことを想ってるはずだから」

「うん…じゃあ、いってきます!」

「いってらっしゃい」


慌てて靴を履いて、ドアを開ける。

早く会って、謝らなければ。

走って、エレベーターの所まで行く。

すぐさま下ボタンを押すけど…あいにくと上行き。

でも、まだ3階にいる。この階より上に行く人じゃありませんように…。

こういう時に限って、時間は長く感じられる。

いっそのこと階段を駆け下りようかと思っていたら、やっと到着した。

そして、ドアが開いた。

「あ!」

「あ!」

私は、思わず声を上げた。エレベーターから、慌てて降りようかとしている人も。

「ヒカリ…ちゃん」

「タケル君…」

まるで、ベタなドラマか漫画のような展開。

私が呆然としていると、タケル君はエレベーターから降りて、言った。

「ヒカリちゃん…今日は、ごめんね」

「え…?」

「うまくフォロー出来なくて…これからは、気をつけるから…」

「いいの!!謝るのは私の方だから…」

予想外の謝罪の言葉に、私の方が謝るのに、出遅れてしまった。

「私…ちょっと、恥ずかしくて…みんなの前で…ごめんね!!」

「でも、僕も全然気に掛けてなかったから…」

「大丈夫!もう、別に、平気!…明日からは、いつも通りで、その…恋人…同士で、大丈夫だから…///」

顔が、爆発しそう。…考えてみれば、「恋人」なんて言葉を使ったのは、初めてかも知れない。

「…ありがとう」

タケル君は、私を抱きしめた。

「お礼言うのは私の方だよ…わざわざ謝りに来てくれて、ありがとう」

タケル君は、なんにも悪くないのにね。

「あのさヒカリちゃん。今日これから、用事ある?」

「え?ううん。大丈夫」

「じゃあさ、これから…デート、行かない?」

耳元で言われた言葉に、思わず体中でどきっとする。

全身が燃えるように熱くなっている。でも…。

「もちろん。行く!」

やっぱり好きだから。嬉しいから。

どんなに恥ずかしくても、周りに人がいても、それでもタケル君が好きだって…。

タケル君がいつも私を想ってくれてるみたいに、私もタケル君を、いつも想っていたいな…。

私は、タケル君には言わなかったけど、エレベーターの中で、そう誓った。

…その瞬間、気のせいか、繋いだタケル君の手の力が、強まった気がした。





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ふう。書き上がり!8/1から早くも1ヶ月。本当は間に夏休み話を入れる予定でしたが…。
ごめんなさい。断念しました;またいつか書けると良いな…。
今回も、かなりギリギリです…。
でも、結構ちゃんと書けました。たぶん。…変な構成だけど;(何)
大輔君にもう少しクローズアップしたかったけど…それはまた今度の機会で。(いずれ、ってことですね;)
テイルモンが、ヒカリちゃん大好きになってるけど(まあいいか。公式だし/ぇ)、結構うまく書けた方だと思います。(私にしては)
クラスメートが出てきましたね。そういや。何気にオリジナルキャラ初です。
でも、名前はまだない。ってか、個性もろくにない。(ヒド)
いつかまたクラスメートが出ないと成り立たない話が出たら、キャラ立ちするかも知れません。(笑)
それでは、お読み下さってありがとうございました!!

作成・掲載日:2006/09/01