<お台場の街中で、愛を誓う>



展望台を出てから数分。

私は、ふと想い出したことを、タケル君に言った。

「あ、そうだ。…誕生日、おめでとう」

「ありがとう」

「プレゼント、なにがほしい?」

「…う〜ん」

今日、8月3日は、タケル君の誕生日。

本当は、おととい聞くはずだったけど、聞けなかったから。

「…羽根」

呟くようにしていったその言葉に、私は一瞬耳を疑った。

「?…羽根?」

「そう。天使の羽根みたいな羽根。そうゆうの付いた、アクセサリーとか、ないかな?」

あ、なるほど。確かに、タケル君に似合いそう。

「…探してみましょ」

そう言って、様々なお店をめぐる。

なかなか欲しい物は見つからないけど、タケル君とお店をめぐるのは楽しかった。

そして…。

「あ…これ」

様々なアクセサリーの中、すぐに私の目に飛び込んできた。

天使の羽根を象った物が2つ付いたネックレス。

「…これ、どう?」

タケル君に手渡すと、タケル君はすぐに笑顔になった。

「これにするよ」

その笑顔と声に、一瞬どきっとする。

「じゃあ、買ってくるね」

私は、もう少し見ていたいような気もする笑顔を後に、レジに向かった。



「…あれ?」

支払いを済ませて戻ってきたら、そこにタケルはいなかった。

「あ、ごめん」

後ろから、声がした。

つくづく思ってしまう。まあ、贔屓目ってのもあるかも知れないけど。

「…ほんと、良い声してるよね」

「え?」

私の唐突な言葉に、隣に移動したタケル君が言った。

「ううん。べつに。それより、早く行こう」

私は、追及されないように、すぐに店を出た。


「はい。プレゼントv」

私は、ちょっと脇道に入って、プレゼントを渡した。

「ありがとうv」

やっぱり、「友達」と「恋人」は違うな、と思う。

今までも毎年、プレゼントはあげてきたけど、今年は違うから。

タケル君の反応が。

タケル君は、ネックレスを袋から出している。

そのときの顔が、いつもと違って無邪気っぽい。

可愛くて、綺麗。なのに、どこか格好良く見える、不思議な笑顔。

まあ、普段も可愛くて格好良いんだけどね。

タケル君は、ネックレスのホックを取った。

付けてあげようか?、と言おうとしたら、タケル君はあの羽根を1つ、ネックレスから外した。

「え?」

私が驚きの声を上げると、タケル君はポケットからなにかを取り出した。

さっきのお店の袋だった。

タケル君は、中身を取り出した。

「…チェーン…」

それは、ネックレスのチェーン。

タケル君にあげたネックレスと、同じ型だ。

「これ、さっき買ったんだ。ヒカリがレジに行った時にみつけてね」

チェーンに、さっき外した羽根を通しながら、タケル君が言った。

「…だから、後ろにいたのね」

「そういうこと。はい、できた」

タケル君は、私の目の前に、ネックレスを見せた。

それは、私があげたネックレスと似た物。

でも、世界にこの2つしかない物。

天使の羽根が1つだけ付いた、ネックレス。

「ぁっ…」

タケル君が、私にネックレスを付けた。

…いきなりこんな近づくから、驚きも合わせてどきどきする。

「うん。すっごい。よく似合ってる」

ネックレスを付け終えたタケル君が、私を見てそう言った。

「そう?ありがとv」

私はそう言うと、タケル君の手にあったネックレスを取った。

今度は、タケル君が驚く番。

私は、タケル君にネックレスを付けた。

付け終えて戻るとき、タケル君を盗み見たら、なんと、笑っていた。

…私の考えは、見透かされてたみたい。

ちょっと悔しいな、と思いながら、戻ろうとした。

すると…。

私の頬に、なにかが触れた。

…タケル君の、唇。

「…!」

私はあまりの出来事に、声が出なかった。

「ちょっ…タケル…!!///」

驚きが解けて、真っ赤になりながら私が言うと、タケル君は、
「ははっ。ごめんごめん」

…赤くもならずに、笑っていた。

「もう…」

恥ずかしいやら悔しいやら、私とにかく真っ赤になった。

「…でも、よかった」

「え?」

タケル君は、急にしみじみと言った。

「また呼び捨てで呼んでくれて」

さらっと、笑顔で言われて、私の顔からは赤みが引かなかった。

「展望台にいた時は呼んでくれたのに、だんだん名前すら言わなくなったから」

ちょっと不安になっちゃって、と、タケル君は苦笑いした。

「あ、ごめんね…その…ちょっと恥ずかしくて///」

展望台では、その、勢いというか、雰囲気というか、気持ちが高まってたけど、

やっぱり、タケル君はタケル君というか・・・正直、ちょっと慣れない。

「そっかー…でも、別に良いよ。呼び捨てじゃなくても。僕も、心の中では、『ヒカリちゃん』って、ちゃん付けしてたし」

「え?そうだったの?」

「うん。心の中でも呼び捨てにすると、何か精神的に持たないっていうか、抑えきれないっていうか、そんな感じがして」

タケル君は、にっこりと言った。・・・うーん。よくわからないけど、タケル君も、私と同じ気持ちだったのかな。違う気もするけど。

「だから…また、今まで通りに、呼ぼうか。ほら、気持ちが高まると、自然と呼び捨てになるし」

「うん…そうだね。無理しても、仕方ないもんね」

私は、にっこりと、笑った。確かに、タケル君のことは呼び捨てにしたいけど、それは、もうちょっと、慣れから。

「じゃあ、これからも、呼び方は今まで通りで、よろしくね、ヒカリちゃん」

「うん。よろしくね、タケル君」

私が言うと、タケル君は手を差し出して、「行こう」と、言った。

私はその手を握って、タケル君と歩き出した。


そして数分後。

私は、ふと想い出したことを言った。

「あ、そうだ。…タケル君、誕生日、おめでとう」

「ありがとう」


やっぱり私達は、もう少し、このままが良いのかも知れない。





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甘いな。(笑)甘々乙女ちっく少女漫画って感じです。(何)
でも、おそらくタケル君は満足してないでしょう。(笑)「私達」と言ってるけど、きっとヒカリちゃんだけだよ、うん。(笑)

この作品も、書いたのは開設前です。しかも途中まで。(爆)
ネックレスつけたあとの「もう…」から先は、作成日2、となっております。(笑)

作成日1の段階では、ヒカリは心の中でもタケルを呼び捨てにしてました。
でも、話も続きませんで、(汗)結果、このような形に。
ピエモンの回で、タケルがヒカリを呼び捨てにした、と言うのを先日の「デジ夏。」で思い出しまして。(笑)
で、ちょっと考えたら即、これの話がちゃんと続きを書けた、と。っていうか、途中半年以上空いて書くってどういう事だ。(笑)

それでは、8/3記念、お読みいただき、ありがとうございました!!!

作成日1:2006/01/09
作成日2:2006/08/02
掲載日:2006/08/03