<─はじまり─>


「ここで…良いんだよね…?」

2003年8月3日。今年も私は、フジテレビにやってきた。

でも、今年は、私1人。

そう、約束したから。

『明日の、8月3日…空いてる?』

昨日の夕方、私宛に届いたメールを、を想い出す。

「11時に球体展望台…と」

球体展望台入口で時計を見ると、まだ10時50分にもなってなかった。

「(さすがに、いないだろうな…)」

そう思いながらも、入ってみた。


──そこに約束の人はいた。


「…タケル君」

外を見ていた彼に、思わず、呼びかけてしまったけど、

言ってから後悔した。

「えっと、その、…ごめんね、待たせちゃって」

おとといの今日だし、なんかぎこちなくなってしまう。

「ううん。僕も、今来たとこだから…」

「そう…」

なんとなく、初々しいカップルのようで、可笑しくもどきどきしてしまう。

「ごめんね、早くに呼び出しちゃって」

「ううん。そんなことないわよ。もう11時だもの」

やはり、どこか初々しいカップルだ。

…しかし、いつもと同じな気もする。

「(ってそれって、いつも初々しいカップルみたいってこ―)」

「…ヒカリちゃん」

「あ、はい!」

急に声かけられたせいか、変な声を上げてしまった。

…やっぱり、タケル君驚いてる。

「えっと、なんでもないの!」

慌てて弁解したけど、これでタケル君が納得するわけ――。

「…あのさ、ちょっと、こっちに来てくれない?」

──あれ?めずらしいな、追及してこない。

…というより、こっちって?

「…どこに行くの?」

私の返事を聞くと、タケル君は質問には答えずに、いつもの笑顔を浮かべながら、歩いて行った。

私は、すぐに後を追いかけた。

でも、意外に早くタケル君は止まった。

「…ここ?」

「…うん」

そこは、私がついさっき通った、入口だった。

「…なんで?」

なんの意味があって、ここに…?

「…ここが、初めてヒカリちゃんを見た場所だから」

「え?」

「4年前の今日、ヴァンデモンを追ってここまで来たとき、初めて、ヒカリちゃんを見たんだ」

「…あ」

4年前の記憶が蘇ってくる。

そういえば、そうだった。

「でも──」

想い出すのをやめて、タケル君に問いかける。

「──なんで?」

そう。なんで?

タケル君にとって、それは、なんなの?

「…ほら、僕たちって、戦いの最中に出会ったじゃない?」

「うん」

「だから、正確に『出会った場所』ってのは、わからない」

「…たしかに。気がついたら、って感じだった」

「でしょ?」

「うん。いつのまにか、話とか、してた」

そう。気がついたら、仲良くなってた。

いつのまにか、すごく、近い人になっていた。

「…いつのまにか、だよね。ほんと」

タケル君の言葉に、私は首を縦に振った。

「こっちに──お台場に──来てからさ、よく、みんなに冷やかされたよね?」

私は、うなずいた。声を出したかったけど、出来なかった。

タケル君の、あの、綺麗な瞳が、真っ直ぐに私に向けられてるから。

「そのたびに、いつも、思ってたんだ」

「…なにを──?」

私は、声を振り絞った。

「ヒカリちゃんは、僕にとってなんなのか」

──顔が、少し熱くなる。

「ヒカリちゃんは、守りたい人だった。あの冒険から、ずっと」

私は、ただただ聞いていた。

「でもね、違ったんだ」

──息をのんだ。

「僕は、確かに今でもヒカリちゃんを守りたい。大切だから、必要だから──」

──私は、呼吸することを忘れていた。

「僕は、ヒカリちゃんに、誰よりも、そばにいてほしいから…!」

──空気が、止まった。

「八神ヒカリさん。僕と、付き合ってください。
 僕の、そばにいてください。
 1番近くで、こんな、脆い僕を、支えてください…!」

──時間も、止まった。


「…はい」

私は、その一言を声に出すのが、精一杯だった。


「ヒカリちゃん…!」

きゃっ///

タケル君が、抱きしめてきた。

その顔はよく見えないけど、私の返事を聞いた時の驚いたような顔とは、違うみたい。

なんか、ほっとした感じかな…?今のタケル君の感じ。

張りつめていたものが切れたような…そんな感じ。

『──脆い僕を支えてください──』

ついさっき聞いた、タケル君の言葉を想い出す。

「(脆い…か)」

確かに、タケル君は脆いのかもしれない。

普段、しっかりしてるように見えても、それは、どこか疲れそう。

だから、こうやって、たまに、力を抜くことが、大切なんだと思う。

その役目が──心の力を抜くことが出来る相手が──私なのは、なによりも、嬉しいことだと思う。

「(もう、「友達」の頃には、戻れないかも)」

そんなことを、少し笑いながら思っていたら、タケル君が顔を上げて、

「…ヒカリ」

と言ったので、

なに?と、私も顔を上げた。そしたら…。

「あっ…///」

瞬間、タケル君の顔が目の前にあって、思わず目を瞑った。

そして、私の唇に、感触があった。

「…もう、興味本意じゃないよ」

唇が離れてすぐ、タケル君が言った。

それを聞いて私は、「もう…」と呟いた。

そして…。

「…私も、もう、興味本意じゃないよ」

そう言って、ちょっと顔を近づけた。

「…これから、ずっと…だよね?」

タケルが、無邪気っぽく聞いてきた。

だから私も──。

「…もちろん」

──無邪気っぽく、答えてみた。

そしたら、タケルは笑った。

いつもより、数倍、可愛く綺麗な笑顔だった。

「ヒカリ…」

呼び捨てになったその呼びかけに、私は微妙に涙で濡れた笑顔で言った。

「タケル…」

その言葉を合図にするかのように、私は目を瞑った。

そして…。


私達の唇は、あのファーストキスよりも、深く、意味のある、重なり方をした…。





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小っ恥ずかしい事この上ないのですがどうにかなりませんでしょうか。(笑)
もうクスクス笑いが止まらない、って感じなくらいです、修正していて。
はい。ここでちょっと右下の方の「作成日」をご覧下さい。

はい。何とサイト開設前です。(笑)んでもって、02視聴前です。当時の記憶のみ。(爆)
まあ、19話見たさにその巻だけレンタルしましたから、その4話除いて、ですが。
無印は見ています。ちゃんと全話。ちなみに、「Focus」と「リフレクション」も聴く前です。
ですから初めに「リフレクション」聴いた時は、歌詞と同じようなこと書いてて自分でびっくり。(笑)
今考えてみれば、よくもまあ様々なタケヒカサイト様と感想サイト様だけで2人の気持ちを妄想したもんだ。ってな感じです。(笑)

とまあ、これはなんやかんやと一応お気に入りで、(関係ないですが駄文2号です。1号は現在未アップ)
でも、これ単品で掲載出来そうになかったので、8/1にアップした2つを書くことに。
しかし、やっぱり繋げるのは難しく、本当は8/3のお誘いは8/1にみんなの目を盗んで、でしたが、断念。
それが、修正、です。他直す所がないか読んでみたらば・・・何この乙女。(笑)
ヒカリちゃんが別人だ・・・まあ、それは一応予想してたので、8/1のはあのようなものになったのですが。(^^;)
乙女ってるよ。(何その言葉)ヒカリちゃんが・・・。っていうか何この甘々。
一応ここ、夏休みの球体展望台なんだけど。 きっと、周りに人大勢いるよー。(笑)

*追記:実際にこれのアップ日に行ったところ、絶対に注目の的って感じでした。
あ、ついでに言いますが、背景の写真も、その時球体展望台で撮ったものです。
ハッキリ言うと邪魔な写真になっちゃいましたね。(汗)

さて、それでは、お読みいただきありがとうございました!!
これからもよろしくお願い致します!!

作成日:2005/12/29
掲載日:2006/08/03