小学校2年生のクリスマス。

あの時のことを想い出すと、全身から、火が出る。



<忘れられない、想い出>


どうして、こんな事になったんだろう?

海辺の道を歩きながら、記憶を、たどってみた。

今日は、毎年恒例となった、8/1計画で、久しぶりにみんな集まった。

それで、あの話に…どうしてなったんだっけ…。


ああそうだ。京さんの所為だ。

あの人、いっつも余計なこと言うから…。


私達、02’メンバーが、集合場所の公園まで歩いていると、

公園の手前に、両手が買い物袋でふさがっている光子郎さんと、満足げなとしたミミさんが歩いていた。

「あ、ミミお姉様!おっねえさ…まあ!?」

京さんが大声を出そうとした瞬間、目の前に信じられない出来事が起きた。


光子郎さんが、ミミさんの唇に、自分の唇を押しつけていた。


「!!!!」

私達は、声も出ず、ただ驚いて突っ立っていた。

すぐに、光子郎さんが唇を離した。

そして、二言三言なにかを言うと(25メートルくらい先だったから、声は聞こえなかった)、

ミミさんが光子郎さんに抱きついた。


「・・・・・・」

私も含めて、みんなが棒立ちになっていた。

京さんを除くみんなは恥ずかしさからだけだったみたいだけど、

私は、うらやましいような、不思議な感覚だった。


そんな沈黙は破ったのは、他でもない99’メンバーの代表、お兄ちゃん。

「おーい!!お前達ーー!!!」

公園から、お兄ちゃんがやってきた。…後ろには、99’メンバーが。

慌てて、光子郎さんはミミさんを引き離す。

「あ?おい、光子郎。お前達今何やって」

「い、いえ、べ、別にたいしたことじゃ」

「ふ〜ん。それより、早く来いよ。…お前達も!!」

お兄ちゃんが私達の方に向かって、大声を出した。

「ええええええええ!!!!?」

光子郎さんが私達の方を向き、驚きの声を漏らした。

「あ、どーも・・・」

大輔君が、反射的に挨拶をした。

「い、い、い、いつから…そこに…!!?」

「えっと、いつって言われると…」

「2人が、キスするちょっと前から」

「って、パタモン!!!」

慌てて、タケル君がパタモンを叱った。…でも、どこか上の空みたいだった気がする。

「あ、おいらも見たがやー」

「こ、こら!アルマジモン!!!」

「みんな一緒だったもんね!賢ちゃん」

「そうだよな!大輔」

「こらお前達ーーーーー!!!!」

止まらないデジモン達の暴走に、私とテイルモンは苦笑いをした。

「あっははは…良かったな、光子郎」

「ほんま、想いが伝わって、めでたいことやないですか」

「良かったわね、ミミ」

お兄ちゃんや、パートナーデジモン達に言われて、ついに沸騰状態の光子郎さんも限界みたい。

「あー!光子郎、どこ行くんだよーー!!!…はは。行っちまった」

光子郎さんは、ミミさんを連れて、どこか逃げてしまった。

「太一がからかうからでしょ」

「って俺の所為か?」

和やかな雰囲気。そう。これで、光子郎さん達を探しにでも行けば、ああはならなかったのに。


「あ〜。良いなあ・・・お姉様」

「なにがですか?京さん」

和やかな会話に区切りがついたときに、京さんが言った。

…もしかして、この時聞かなければ良かったのかもしれない。

「なにって、そりゃあ、ファーストキス♪のことじゃない」

「ファーストキス、ですか…?」

私は、問いかけに答えられた言葉に、一瞬頭にある映像が浮かんでしまった。

「あ、、、そっか。ヒカリちゃんは、この前…」

みんなの頭の中に、私とのものとは違う映像が浮かんだらしい。

そう。空気ではなく光だけど、同じ行為である、『人工呼吸』と言う名の。

「じ、人工呼吸は含まれないだろ」

お兄ちゃんが、地面の方を見ながら投げやりに言い、

「な、ヒカリ」

ころっと顔を変えて、聞いてきた。

「え、あぁ…」

「でも、気持ち的には、やっぱり、衝撃というか」

「京さん?」

私は、顔が赤くなってきたのを感じて、興奮してすごいことを言いそうな京さんの名前を呼んだ。

「あ、ごめんごめん…」

「そういえば、前にうちの病院で、人工呼吸してもらって助かった人がいて、その人達もファーストキスがどうのこうの、って言ってたな」

「実際、学校での講義で人形と、って方も多いみたいですしね」

タケル君が言った。…顔は、特に赤くはなかった。

「でも、人形は含まれないのではないでしょうか?もしそうでしたら、触れるもの全て、コップなども含まれてしまう可能性も出てきますし」

「さっすが伊織!するどい!」

「いや、鋭いって京ちゃん…;」

「あのさあ、京ちゃん。そろそろ、ミミちゃん達、探しに行った方が…」

「あ、そうですよね!すみませんみなさん。早くミミお姉様に、感想聞かないと〜♪」

「か、感想?」

折角空さんが話を逸らしてくれたのに、うっかり、みんな京さんに突っ込んでしまう。

「はい。ほら、知ってます?ファーストキスって、レモンの味がするって言う話。…ヒカリちゃんと空さんなら、知ってますよね?」

みんなの反応が希薄だったせいか、京さんは「女の子ですし」と聞いてきた。

「私は…知らなかった…かな」

「ヒカリちゃんは?」

「あ、私は知ってました」

「やっぱり〜。本当はどうなのかしらね〜」

そのセリフが、私の中で想い出と重なってしまって、つい、本当にうっかり、口を滑らせてしまった。


「いちご、に近かったですね」


瞬間、私は真っ青になったあとに、顔から、火が出た。

ヤバイ。

そう思った時には、既に遅し。

「えええ!?それって、この前の人工呼吸の時の!?」

「あ、い、いえ!その別の…」

「別の?」

「あ…」

私は、いつになく、パニックに陥っていた。

「ヒカリ…それって…」

お兄ちゃんが、まさか、という顔で聞いてきた。

「ヒカリ、キスしたことあるんだね」

パタモン。またしても…爆弾発言。

想い出すだけで、顔が赤くなるよぉ…///

「ひ、ヒカリーーーーー!!!!本当か!?本当なのかぁあああ!!!?」

お兄ちゃんが、私の肩を揺さぶった。

「太一、落ち着け!!!」

「どこのどいつだ!?っていうかいつしたんだ!?いや、そもそも、されたのか!?好きなのか!!!?」

お兄ちゃんがあまりにも激しく肩を揺さぶるから、私は、目も回って更に混乱状態になってしまった。

それで…。

「ち、小さい頃に…興味本意で…」

答えてしまった事実に、お兄ちゃんは、手の力を抜いた。

「きょ、興味本意って…」

「京さんの言ったように、ファーストキスは何味だろうって事になって…」

「それで、してみたと…」

「うん」

「ちっちゃかったんだな…」

「う…ん」

「…のわりには覚えてるな。さすがヒカリ」

「あ、ありがと…」

この時のお兄ちゃん、正直なんだか怖かった…。

「…相手も、覚えているのか?」

「え…?」

私は、タケル君を見た。

今まで、顔色ひとつ変えなかった彼。

覚えて、いるのかな?

些細なこと。軽くて、浅くて、気持ちのないもの。

そして、まだ、『大切な友達』だった、こと――。

「ひ、ヒカリちゃん?」

タケル君の声が聞こえて、ハッと、我に返った。

「おい…まさかタケル…お前…」

大輔君が、私とタケル君を交互に見ていた。

あ。

またしても、ヤバイ、と思った。

「あ、その…」

私は、言葉に詰まった。

タケル君が、あの時のことを、覚えているのか、と思ってしまって。

「タケルぅ…本当なのかぁ…?」

「…太一さん…怖いです…」

「笑顔でおっかねえのはお前の十八番だろ〜」

「なんですかそれ…;」

「で?お前からしたのか〜?」

「え?いや…その…まあ…」

ピク。

お兄ちゃんが、わずかに怒りに動いた気がして、私は思わず大声を出した。

「タケル君は悪くないの!言い出したのは私だし!!」

一気に言ってしまって、言い終わってから、みんなの視線を感じて、すごいことを言ったことに気がついた。

私とタケル君が、小2の時にファーストキスをした、と言う事実を、明言したことに。

もう、顔から火が出るどころじゃなかった。

沸騰も限界。光子郎さんの気持ちが、今ならわかる気がする…。

私は、全速力で走り出して、恥ずかしさで、逃げ出した。


そして、今の状態…。


「はぁ…」

ため息。

これから、どうやってみんなに会えば良いんだろう。

どんな顔して、タケル君に会えば良いんだろう。

というより、今日お兄ちゃんが帰ってきたときが問題な気が…;


「はぁ…」

また、ため息。

今日は私、いつもの京さん以上に、余計なことばかり言った。

タケル君は、あれからどうしたんだろう。

質問攻め、かな…。

全部、言ったのかな…?

それより、全部、覚えてるのかな…?

だとしたら…。

冷やかされてきた去年1年間。

その間、ずっと私のこと、どう思ってたのかな…?


私は、家に帰ってからも、ずっとそのことを考えていて、

テイルモンを置いて逃げてきたことに、気がつくことすら、なかった。





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…うーん。雰囲気違いすぎる。(笑)っていうか、これヒカリちゃんなのかな…。(汗)
ってか、太一さんが…!!8/1なのに…!!
このようなものを8/1にアップしたことを、お許し願います。。。

作成日:2006/07/31
掲載日:2006/08/01