クリスマスにお正月。

世間は、冬休み。

外は冷たく、中は暖かい時期。

僕とは、逆だ。



『そこにいるあたたかさ』



気温は感じないけど、部屋に入ると不思議とあたたかく感じる。

今、僕がいるのは、なんとヒカリちゃんの家。

そして、半年以上前、毎朝通っていた部屋。


「太一。聞いてるのか?」

部屋にいるのは、太一さんと、丈さん。勉強をしている。

「聞いちゃいるけどー…わかんねえ」

「ええー本当かー?」

「やっぱ今更追い込みなんて無理だって」

受験勉強か…。丈さんは自分の受験が終わっても大変なんだなあ;

「でも、そうも言ってられないだろう?ここ2ヶ月分くらい取り戻さないと…」

空気が、少し変わった。

「わかってるよ。だからこうしてやってるんだろ?」

太一さんはそう言うと、また勉強に没頭した。

「しっかしみんなも白状だよなー。俺が苦労してるってのに」

「仕方ないだろ?光子郎はミミ君が帰国してるし、ヤマトと空君だって」

「クリスマスだもんなー」

「…ついでに言うと、賢君と」

「京ちゃんだろ。知ってるよ」

仲間達の恋愛模様。僕のいた時より、2組増えてる。

「光子郎達も京ちゃん達も、あいつのおかげ、か」

「タケル君か?」

「そ」

え?僕?何かしたっけ…?

「どっちもあいつがいなくなった事で、励まし合ってたんだよな」

「まあ、それだけのおかげってわけじゃないとは思うけど」

「どっちにしても、何かのきっかけにはなっただろ?」

「それはまあ…タケル君だしね。いなくなっても、みんなを幸せにしたいっていう思いが強いんだよ」

いや、…そうなのかな?

「今回も、きっかけになったりしてんのかなー」

太一さんが、少し上を見ながら言った。

今回…。

「……太一はさ」

落ち着いた声で、丈さんは話し出した。

「2人が、いたとしたら、どうだったと思う?」

「え?」

「たぶん、それでもきっかけは2人が作ってたと思うよ」

どっちにしても、クリスマスはみんな同じ相手と過ごしてたよ、と丈さんは笑った。

そうなのかな?

そうだと、いいな。


僕は、その部屋をあとにすると、展望台へと、飛んだ。

1日、知り合いの家を回ってみた。

そして、その、報告。


“ヒカリちゃん”

“あ…おかえり”

球体とは言っても、近くまで行けば大きくて丸さも関係ない。

そんなこの場所で、ヒカリちゃんは待っていた。

“みんな、笑ってたよ”

“そう…よかった”

少しだけ笑った顔。たぶん、僕の答えは、わかってた。

“こうやって見るとお台場って、やっぱり人が多いね”

“待ってる間、見てたの?”

“うん。小さくて表情までは見えないけど、みんな笑ってるみたいだった”

歩いている人たち。

みんながどんな時間を過ごしてきたのかは知らないけど。

心の中まで冷たい人も、いるかも知れない。

哀しみの底にいる人も、いるかも知れない。

でも。

いるってことの、あたたかさ。


“ねえ、ヒカリちゃん”

“なに?”

“冬って、見てるだけで寒いね”

僕が笑いかけた人は、あたたかさを、感じているのかな?


太陽が輝いている。

でも。

僕とヒカリちゃんは、どこか、

冷たい。





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作成・掲載日:2006/12/25