あれから。

僕はずっと。

海を漂い続けた。

もうどれくらい経ったのだろうか。

未だに僕は、ここに存在している。



『想い、残すなら。』



結局、消えることなど出来ないのだろうか。

幽霊というのは、そう簡単に消えることを許されたりはしないのだろうか。

このまま永遠にここを漂っているのだろうか。

でも、それでもいい。

みんなが幸せなら、それでいい。

幸せになってくれれば、それでいい。

確かに、みんなを幸せにするように見守って、この力で、なんとかしていきたいけど、

でもそれは、それは…。

いつかの未来に、響いてくる。

僕のことが、みえる人がいるから。

その人の邪魔にだけは、なりたくないから。

だからこのまま、消えてしまいたい。

…もしかしたら、それすらも望みとなって、消えたいのに消えることが出来ないのかも知れない。

思い残すこと。それはもうその他にはないはずなのだから。

そう思い始めてから僕は、時間の経ち方がわからなくなり、消える一歩前まで来たのだと思う。

しかしその割りにまだまだ意識はあり、変化がない。

どうすればいいのだろうか。

みんなのことは、僕がいなくてもやっていける。そう思って、もう思い残すこともないのに。

もう今なら、彼女がなにを言っても、なにをしても、大丈夫な気がするのに。


突如として、僕はなにかを感じた。

呼ばれている。そんな感覚。

誰に?ワカラナイ。

でも、呼ばれてる。

それだけは確か。

“ひかり”が呼んでいる。

“ヒカリちゃん”が呼んでいるのとは違う。

でも、なにかが、誰かが、僕を呼んでいる。


…このまま消えられないのなら、

いっそ、

全ての想いを消すために。

賭けてみよう。

一か八か。みんなの幸せを。

この嫌な予感とも言える感覚に。

災いを防いでくれ、と言っている“なにか”に。


僕は久々に海を出て、飛んだ。

ここがどこなのか、漂っていた為、よくわからなかったけど、

でも、行き先だけは、ハッキリとわかる。

時間は掛かると思うけど、僕はその場所へと向かった。

黒く染まることも、抜け落ちることもない羽根を意識して。


──目的地、愛しき人の、家。──





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作成・掲載日:2006/09/01