「ヒカリー。神社、行くぞー」
『あの日の影は、希望の光へ』
あの日。あの初詣の日。
別に、彼はその日にいなくなったわけじゃないのに、
不思議と、よく想い出す。
お兄ちゃんに言われて、初詣に行った。
気温は寒いはずなのに、不思議とあったかかった。
…今と逆だね。
みんなで行った、初詣。
大晦日の事件のあと、色々と大変で、もうすぐ学校が始まるときに、やっと行った。
色々願った。これからのこと。
そう、いまのこと。
あの時の未来も、今にかわった。
もう2度と、あの神社になんか行かない。
お祈りなんて、通じないから。
神様にお願いなんか、しない。
だってお願いは、自分の力でするものだから。
私はいつだって、自分の力ってものがわからなかった。
“光”ってなんなのか、わかんなかった。
でも、今は、関係ない。
とにかく行動するの。それだけ。
先月。行動を決意した。
そのきっかけを教えてくれたのは、意外なところから。
そう、ミミさん。
1人アメリカにいるから、こっちの事情、よくわからなかったみたいなの。
おかげで、良いこと知ったんだ。
「…パタモンと光子郎君がね、デジタルワールド中を探しているのよ。
ほら、想いの具現化するものを。デジタルワールドなら、きっとどこかに、奇跡があるって。
だから、ヒカリちゃんもがんばってね」
このメールを受け取ってすぐ、光子郎さんに電話をした。
光子郎さんの話では、ミミさんに知られたのは偶然だったらしく、本来は秘密。
秘密って事は、ミミさんは知らなかった、もしくは仲間みんなで探してるかと思ったみたい。
実際は、デジタルワールドの奇跡の可能性を、悪人に知られたら大変だからって、誰にも言っちゃいけないって、
私ですら知らなかった。
でも本当は、そんなんじゃない。
秘密な理由。
本当は、みんながやっと現実を受け入れ始めたから。
だから、言えないだけなんだ。
言ったらきっとみんな、血眼になって探すと思う。
でもそれは、なによりも彼に悪いから。
探すのは、私達だけで、、、
パタモン達と探し続けて、1ヶ月。
なにも見つからない。
でも、それは当たり前のこと。
そう簡単に見つかったりしたら、今までの戦いがなんだったのってことになる。
「……今年も曇ってるなー」
お兄ちゃんの言葉に、私はハッと気付いた。
七夕飾りの準備中だった。
「毎年これだもんなー。晴れにくいってのは知ってるけど、 これじゃあ、叶う願いも叶わねえよ」
お兄ちゃんが空を見てぼやく。
曇り。
別に構わない。
どうせ、お願いなんて、しないから。
私は私の力で、奇跡を探すから。
奇跡を探すのに、お祈りなんてしない。
お祈りも奇跡でしょ?
それなら、叶えるために使うんじゃなくて、見つけたときに、使う。
「…じゃあ、立てるか」
笹を、ベランダに立てる。
飾り付けされた笹。
クリスマスとはまた違った綺麗さがある。
ライトではなく、わっかの飾り。
綺麗な飾りではなく、綺麗な短冊。
そして、天辺には星ではなく、
私の、白紙の短冊がある。
それで良い。お星様は、なにもしなくて良い。
年に1回でも会える七夕様は、この日くらいお願い事叶えるんじゃなくて、楽しんでほしい。
私は私でやるから。
私達の力で、奇跡を起こすから。
お祈りじゃなくて、今までの知識や、希望。
神頼みじゃなくて、すべての想いや、光で。
私は、私達の力で、やってみせる。
お星様の輝きのように、何百年前の光が今見えるように、
時間をかけて、やってみせる。
いつか、光で照らせるように。
奇跡を起こせるように。
希望を信じて。
想いを信じて。
私、やるからね。タケル君。
光を、奇跡の希望の光を、起こしてみせるから。
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作成日:2006/07/06
掲載日:2006/07/07