「はい、ヒカリちゃん。フランスのおみやげ」
「わ〜い!待ってました!」
小学校を卒業し、少し長めの春休みのこと。
八神家のリビングで、タケルは持ってきた紙袋をヒカリに手渡した。
中には大小様々な箱とラッピングされた袋が入っている。
「こんなにたくさん…いいの?」
「持ってけっておじいちゃんが強引にね」
苦笑いしながらも、嬉しそうに、どこか楽しそうにタケルは言った。
「この箱は太一さんに。こっちはアグモン用。あと、こっちのお菓子はたぶんテイルモンが気に入ると思う。これはクッキーだから、みんなで食べてね」
ひとつずつに説明や解説を入れながら、紙袋の中身を出していく。
ヒカリはそれぞれを興味深く聞いていたが、紙袋がからっぽになると、少しさみしそうな顔をした。
「どうかした?」
タケルは目ざとく、その表情を覗き込んだ。じっと目を見つめて、顔を近づけて。否定も誤魔化しもさせないように。
「…大したことじゃなくてね、」
気まずそうに目を逸らすと、ヒカリはもじもじと顔を赤らめて言った。
「おみやげ、私宛のだけ、なかったなあって」
一瞬の静寂。
ヒカリが怖ず怖ずとタケルの顔を盗み見ると、タケルはキョトンとしていた。
そして、不意に笑い出した。
「はははっ」
「なにも笑わなくてもいいじゃない」
子どものように拗ねるヒカリに、タケルは嬉しそうな声色のまま、謝った。
「ごめんごめん、まさかそんな可愛い拗ね方すると思わなくて」
「んもう…」
照れて頬を赤く染めながら、ヒカリは口を尖らせる。楽しそうなタケルに文句を言いたそうに。
「大丈夫だって。ちゃんとあるよ」
笑いを止めてると、タケルは鞄から小さな袋を取り出した。
「小さいから、なくしたり紛れたりしそうで別にしてたんだ」
はい、と手渡されたそれは、とても小さくて軽くて。
「…開けてみてもいい?」
「もちろん」
包みの中身は、見慣れないアクセサリーだった。
ピンクの模様が付いていて、まるで光の紋章のよう。
「これ、桜模様なんだって」
「桜?」
「向こうのデザイナーさんがアレンジしてるからパッと見わかりづらいけど、よく見ると桜なんだよ」
ヒカリは、アクセサリーを持ち、色んな角度から見つめた。
「ほんとだ…桜だわ」
見慣れた桜とはやや異なるものの、桜らしさや和の雰囲気への愛情が伝わってくる。
「見た瞬間にこれはヒカリちゃんにあげないとって思って。光の紋章に似てるでしょ?」
「うん、私も最初そう思った」
目線をアクセサリーに奪われながらも、ヒカリは同意を示した。ひとめで気に入ったそれを、大事に手のひらに乗せて。
「でもこれ、探したんだけどピアスしかなくて」
「ピアス…」
どうりで見慣れないはずだと、ヒカリは納得した。
ピアスなど付けたこともないし、お店で手に取ったこともない。
小学生だった自分には、オトナのアイテムだ。
「中学になってもピアスは禁止だと思うけど、よかったら、大人になるまで持っててくれるかな?」
少し申し訳無さそうに言うタケルにどこか物珍しさを感じながら、ヒカリは笑顔で頷いた。
「もちろんよ」
ヒカリはピアスを耳元に持ち上げると、タケルの目を見た。
「大人になったら、付けるね」
笑顔のヒカリを見て安心したのか、タケルもまた笑顔になった。
「きっと似合うと思うよ」
「ふふ。ありがとう。似合うような綺麗な大人になるね」
「じゃあ僕も、釣り合うような大人にならないとだね」
見つめあって笑いあって。きっとそのピアスを付ける時も、こうして笑いあっているのだろうと、信じて。
「大人になっても、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
手の中で、ピアスがきらりと反射した。
それはひとつの、春の証。





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しずくちゃんにプレゼントしたタケヒカです。
繋がりはないですが、こちらのサスサクとセットでお贈りしたもの。
せっかくだからと、タケヒカで「桜」を、サスサクで「希望の光」をテーマにして書いてみました。
これも当時のメモがないのですが、このテーマで書きたいというのがまずあって、
桜といったら光の紋章とちょっと似てるなーみたいなのが浮かんできたんだったかと思います。
ピアスに関しては、以前にタケヒカ好きさんが02最終回のヒカリちゃんはピアスを開けている、と言っていたのが印象に残ってまして。
その時は、誰が開けたんだというお話でしたが笑、タケルと一緒だといいなーとか思って。
結果こういう話になった、んだと思います。たしか。
個人的には結構気に入ってたりするので、楽しんでもらえたら嬉しいです!

作成日:2016/2/26
掲載日:2019/3/30