遠くに行く彼の姿。
引き止められなかった自分の手。
泣き叫ぶ声は、誰のものだろう。

「…サクラ?」
彼の声が聞こえる。
優しい声。
私を心配する、声。
「サクラ」

呼ばれていると気が付いて、私は目を覚ました。
「大丈夫か?」
隣を見ると、サスケくんが心配そうに私の顔を見ていた。
「顔色、悪いぞ」
額から汗が流れて、鼓動も早いのがわかる。呼吸も少し落ち着かない。
「うん…大丈夫」
深呼吸しながら受け答えて、やっと頭が回ってきた。
旅の途中に立ち寄った宿。窓の向こうはまだ暗い。
夢の内容は思い出せないけど、悪夢だったことは覚えてる。
そうか、自分は悪夢にうなされて起こされたのか、と漸く理解した。
「…ごめんね、心配かけて」
「そうじゃないだろ」
謝る私に、サスケくんはきつい言葉で、それでも優しく言ってくる。
「オレが謝ると、いつもお前は言っている。『こういうときは、ごめんじゃなくて、ちゃんと話して』ってな」
頭を軽く叩かれて、怒られた。
そしてそのまま、撫でられて。
そうよね、ちゃんと、言わなくちゃだめよね。
「…たまに、夢を見るの」
話し出す私に、サスケくんは変わらず頭を撫でてくれる。
「たぶん、サスケくんが、行っちゃう夢」
サスケくんの手が、止まった。
「よく覚えてはないんだけど、すっごく辛くて、苦しくて。届かなくて、泣いて、叫んで、暗闇に呑まれていくの」
サスケくんは、動かない。
ただ、じっと私を見つめてくる。
「こうやってサスケくんと一緒にいるのに、だめよね、私ったら」
いつまでも過去の絶望を引きずるなんて。
サスケくんはもう、隣にいてくれるのに。
「…サクラ」
ぎゅっと、手を、握られた。
「大丈夫だ。オレはもう、闇に生きたりはしない」
まっすぐ私の目を見ながら、サスケくんは、とても優しい声でそう言った。
でも、握られた手から、感じる。
後悔を。心配させた自分自身への怒りを。
私はそっと、サスケくんの顔に手を添えた。
「ありがとう」
隣にいてくれて。私と同じ世界を歩いてくれて。
「礼を言うのはオレのほうだ」
サスケくんは少し照れながら、目線を私のお腹へと移した。
「自分がこんなに希望に満ちた想いを得るとは、思わなかったからな」
優しい声と眼差しで、サスケくんは私のお腹に手を当てた。
「この子がいるかぎり、オレはもう闇に呑まれることはない」
自然と、目から涙がこぼれた。
返事をする代わりに頷くと、サスケくんは、私の涙を拭って、優しく、言ってくれた。
「もちろんサクラ、おまえもオレの希望の光だ」
ありがとう、サスケくん。
涙が、溢れてきた。

大丈夫、パパとママは、もう大丈夫よ。





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しずくちゃんにプレゼントしたサスサクです。
繋がりはないですが、こちらのタケヒカとセットでお贈りしたもの。
せっかくだからと、サスサクで「希望の光」、タケヒカで「サクラ」をテーマにして書いてみました。
これも当時のメモがないのですが、このテーマで書きたいというのがまずあって、
そこから「希望の光」といったらサラダちゃんは欠かせないだろう。というところになったんだと思います。
なので最後の文はサクラちゃん視点でもいいしサラダちゃん視点でもいいかなと。。
にしても、改めて読んでみると、自分サスサク好きだなーって思いますね。書けてよかったです!

作成日:2016/2/26
掲載日:2019/3/30