パートナーたちが走り回る姿を見ながら、ほっと一息。
冬には雪合戦、春には花より団子、そして夏には。
炎天下の公園で鬼ごっこである。
「……元気だなあ」
ぽつりとこぼした言葉に、後ろから声がした。
「ルイくんって、夏似合わないよね」
声の主は、公園に敷いたレジャーシートに座った。ルイの隣に。
「高石って、優しそうに見えて切れ味良いよね」
「似合わないって思ってるんじゃん」
嫌味を言ったつもりだが、肯定の意味だけ拾われた。まあ、似合わないのは認める。
緑が風に揺れる。第三台場公園は観光客も少なく、穏やかだ。
響くのはデジモンたちの声。
そして。
「待ちやがれ〜!!」
子どもに混ざる大人のような大輔の声。
「大輔、変わんないなあ」
「小学生からの付き合いだっけ?」
「そ。全然変わんない」
当時の写真を見せてもらったことはある。
「高石もそんなに変わってないんじゃない?」
「どうだろ。そうかもなあ」
ごろんとレジャーシートに寝転んで、ぼやくように言う。
なんとなくルイも倣って、寝転ぶ。視界いっぱいに青空が広がった。
「……今日は、記念日なんでしょ」
「うん。だから集まってる」
「でも、ここにいるメンバーの中では、君だけだ」
あの閏日にルイを助けてくれた、2002年の英雄。通称、02組。
あれから沢山の選ばれし子どもたち……だった大人たちに出会った。
そして、隣に寝転ぶ人が書いた手記も、読んだ。
「大切な日だろ」
いいのか、と暗に問う。
ここにいて、いいのか、と。
99年の子どもたちは、別の場所で集まっているんじゃないのか、と。
「……懐かしんではいるよ。何度も書いて思い出してるし、僕にとって大事なことだ」
青空に言うように、高石タケルは言う。
「それでも、過去のことだし。僕は、ずっと未来を見ていたいよ」
かつての希望の子として。
長年背負ってきたものを、滲ませるように。
「……そ」
軽く反応して、黙る。
風に乗って、大輔の声が届く。
「ルイも来いよー!」
暑いから嫌だと言いたい気持ちと、友だちと遊びたい気持ち。
比べるまでもなく、後者の勝ちだ。じゃなきゃ、ここに居ない。
立ち上がったルイの耳に、タケルの言葉が聞こえた。
「もしかしたら僕は」
誰にともない、独り言のように。
「毎日記念日みたいに過ごしてるのかもね」
ずっと思いを馳せながら。
背負ったものを降ろすこともなく。
時に青春のように懐かしんで。
時に人生の目的のように進む。
生涯忘れ得ぬ、切り離せぬ体験。
「さてと。僕も参戦しようかな」
タケルは立ち上がり、笑顔で言った。
「ルイー!」
「ほら、大輔呼んでるよ」
走り出すタケルの背を追うように、ルイは地面を蹴った。
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祝・メモリアルです!25周年だ!
内容は去年の私からのバトン、ルイくんでした。なのでビギ後の夏ですね。25年絡められなかった。。
ビギ、楽しかったです!!ルイくんつらいしデジヴァイス切なかったー。そしてウッコモンのホラー描写最高でした。
映画館で見て以来見直してないのでルイくんちょっと色々おかしいかもですが、ご容赦ください…。
2024年も楽しんでいきましょう!祝・メモリアル!
作成・掲載日:2024/08/1