変わらない日常と、変わっていく日常と。
 日々はその積み重ねなのだろうと、実感を込めてタケルは言う。

 オンラインでの口頭インタビューを終えて。
 リビングでひとり、コーヒーを淹れる。
 小さな頃は苦くて飲めなくて。
 背が伸びた頃には、ミルクを入れて飲むようになって。
 中学くらいの頃から、カフェでコーヒーを頼むようになり。
 大学生になる頃には、新味が出れば買いに行くようになった。
 コーヒーひとつとっても、思い出と成長、自身の歴史が刻まれている。
「今年も、行けなかったか……」
 来年こそはと思いつつも、内心では難しいだろうと思っていた。
 世界の情勢は、そうそう都合よくハッピーエンドにはならない。
 これまでの冒険だってそうだ。一瞬でラスボスを倒す物語など、世界中をどこを探してもなかった。
 いつだって、敵は次々に現れ、平和を掴んだと思ったら、また争いになる。
 それでも、希望は捨てない。
 諦めないことの難しさは、大人になるにつれて痛感したけれど。
「それでも、僕が諦めるわけにはいかないからね」
 希望の象徴と言ったら語弊はあるけれど、自身の著書で紋章については何度も語っている。
 そのたびに、希望の代表としての、背負っていたものの大きさを確認した。
 今でもその重荷は、変わらない。
 よりあたたかなものとして、背負い続けている。
「おとーさん、おしごと、おわった?」
 昼寝をしていた息子が、眠そうな目を擦ってタケルのもとへと向かって来た。
 足元には、ポヨモンと、パタモン。
 世界はまだまだ平和ではないかもしれないけれど。
 今この瞬間、タケルは平和だなと、思った。
 彼らが大きくなるこの日々を、どこまでも積み重ねるために。
 まだまだ、冒険は、終わらない。





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2021年、22年目のメモリアルです。せっかくの日曜日なのに絡められず無念…。
というか、なんか、いつも以上にまとまりないですね…?
何を書こうか迷って、去年のを先に読みまして。
そしたらやっぱり今年も2021年現在だなと。
去年の自分からのリレー小説みたいになりました。
となると、これは再会の折にはわちゃわちゃを書くことに…?え?なるの?
未来の自分頼んだ!(忘れてそう)
ではでは、祝・メモリアルー!!



作成・掲載日:2021/08/1