「ハル、そっちはどうだ?」
ある夏の日。僕らはお台場に来た。
「ううん。勇仁はどう?」
目当ては、新たに追加された超レアトレジャー。お台場にあるらしいと聞いて、勇仁とエリさんとアストラくんと探しに来た。
「こっちもダメだ」
海沿いを歩きながら、みんなで探す。たまに状況を聞くけど、首を横に振るばかり。
「ここじゃなかったのかなぁ…」
周りに人もあまり居ないし、違うのかも。辺りを見回してふと、目に付いた。
黄色い、蝶々。
なぜか目に留まって、逸らしたくない。
「ハル?」
勇仁に声をかけられて、我に返った。無意識に、吸い寄せられるように、足を踏み出していた。
「どうした?」
「ううん、何でもない。今あそこに蝶が…あ」
指をさそうとしたら、すぐ近くに人が居た。金髪のお兄さん。いつの間に居たんだろう。
「あ、ごめんなさい」
手が当たりそうになって、慌てて謝った。お兄さんは、優しそうな顔をして、笑った。
「そのゴーグル、かっこいいね」
「え?」
唐突に風が吹いて、目を瞑った。
「ハル、今のは…」
目を開けると、お兄さんは居なくて。
「勇仁も、見た…?」
夏らしく怪談でも体験したのかな。でも、そんな感じじゃない。
「ガッチモン、検索できる?」
『もちろんだ!えーっと、ん??文字化けしてるな…小説家…?』
小説家…?なら話してみたかったなぁ。
「お前達」
暢気に考えていたら、急に聞き覚えのある声がした。
「レイくん!」
夏の海に似合わない黒い服で、レイくんがいた。
「なんでここに?」
「妙な反応があったんでな」
『妙な?』
『何処からかハックされたような現象だ。何者かの干渉を受けている可能性がある』
ハックモンの言葉に、お兄さんの姿が浮かんだ。
「あのね、さっき…」
何か関係があるかも知れない。説明しようとした時に、エリさんの声が響いた。
「みんな、見てこれ!」
振り向くと、エリさんはアストラくんのスマホを指していた。
「レアトレジャー見つけたのか?」
「そうだけどそうじゃなくて!」
勇仁の言葉に首を強く横に振るエリさん。なんだろう。僕らは首を傾げると、駆け寄った。
「ほら、これ」
アストラくんに見せてもらうと、画面にはやはりレアトレジャーが。
そのアイテムの名前は、タグ。
「あれ?」
レアトレジャーのアイテムが変わった。
D-3、ディーアーク、ディースキャナ、デジヴァイスiC、クロスローダー。そして。
「あ、戻った」
デジヴァイス。
色が、変わっていく。
オレンジ、青、赤、紫、緑、黒、黄色、そして、ピンク色。
「うわっ」
突如スマホが光り出して、蝶々が飛んできた。
色とりどりの、綺麗な蝶。
空に向かって舞い上がっていく。
なんとなく、僕は、アプリドライヴを出した。
掲げるんじゃない。表面を、空に向けて。
何かに囁かれたように、導かれるように。
僕らは円になって、アプリドライヴを、かざした。
「あっ…!」
空に舞っていた蝶々が光り、姿が、見えた。
8人の、子どもたち。
泣きそうな顔で叫びながら、虹色の光の中を、空へと浮かんでいく。
そのなかでひとり、笑顔の男の子。金色の髪をした、緑の帽子の男の子。
男の子と、目が合った。
彼は急に笑顔をやめると、優しい顔で、目線を動かした。
その瞳の先に居たのは、ゴーグルの少年。
泣きそうな顔で、それでも、勇気を持って、立ち向かう姿。
言葉にできない思いが、僕の中に溢れた。
その瞬間は、あまりにも唐突だった。
急に、世界が元に戻って、青い空が目の前に広がった。
「なんだったの、今の…」
エリさんが呟いたけど、僕達はみんな、同じような顔をしていた。
わかってるんだ。なんでなのかはわからないけれど、わかったんだ。
『なあ、ハル。今のって…』
ガッチモンの声に、僕は笑って頷いた。
「主人公、だよ」





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2017年、ギリギリ無理やりで申し訳ないですが、メモリアルおめでとう!!
滑り込み突貫工事すぎてマジでドッカンパンチくらいたいレベルですが、愛だけは込めて。
18回目という記念すべき年でしたがそこまでは盛り込めず…。
でも、今年は絶対にアプモンを出したくて。タケルさんにあのセリフを言ってほしくて。
ただそれだけの勢いで書きました。。もしかしたらあとでひっそり修正してるかもしれません…。
兎にも角にも、祝・メモリアルです!!!


作成・掲載日:2017/08/1