「あれ?タケル君」
夏休みまっただ中の8月3日。廊下の角を曲がると、下駄箱に見慣れた彼がいた。
「ヒカリちゃん。ヒカリちゃんも来てたんだ」
暑いのに大変だね、と笑いながら上履きを脱いでローファーに履き替える。
私のクラスはもう1つ先の下駄箱だけど、立ち止まって会話を続ける。
「そうなの。友達に頼まれて、花壇の水やりに。タケル君は委員会?」
「そのとおり」
「お疲れさまです」
どこか笑いながら、軽口を叩くように、声を弾ませる。
こうやって話すのも、久しぶり。
「タケル君も今から帰るところ?」
「うん。一緒に帰ろっか?」
「そうだね。久しぶりに一緒に帰ろう」
そう言いながら、足早に自分の下駄箱に行く。
中学に入って4ヶ月が過ぎた。部活に入っているタケル君とは、行きも帰りも会うことがなくて。
「お待たせ」
急いで靴を履き替えて、走るようにタケル君のところに行く。
「そんなに急がなくても大丈夫だよ」
苦笑いするように言うタケル君につられて、私も笑った。
「じゃ、帰ろっか」
歩き出して、ふと、気付く。
「そういえば、今日って誕生日だよね?」
「誰の?」
違ったかな、とタケル君の顔を見ると、それはどこかおどけていて。
「…そんなんじゃ祝ってあげないわよ」
「ごめんごめん」
「祝ってほしい?」
「もちろん」
そう言うタケル君の前にさっと立って、彼の歩みを止める。
そして、その手を取った。
両手でタケル君の両手を包むこむようにして、瞳を見て、一言。
「タケル君、生まれてきてくれて、ありがとう」
キミに会えてよかった。
「お誕生日、おめでとう」
私の、もうひとりの、パートナー。
「ありがとう。僕も、ヒカリちゃんに会えてよかった」
タケル君はそう言うと、ゆっくりと私の手を解き、体ごと抱き寄せた。
「今日という日に、感謝だね」
出会えたこの日に。出会えた奇跡に。
「そうだね」
と。笑顔で答えながら。
タケル君を、抱きしめた。
あたたかさに包まれて、心から、嬉しくなった。





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祝・タケヒカ記念日!というわけで、 支部に投稿した物の誕生日設定バージョンです。
というのも、非公式設定のため支部のような大きなところでやるには、いくら底辺ユーザーとはいえ躊躇しまして。。
それでもサイトではずっとずっと9年間誕生日として祝い続けていたので、やっぱり祝いたいなと。(というか10年目なのですね…もっと頑張ればよかった…)
なので急遽誕生日設定ぶっこみました。のでなんだかもう恋人なのか友達なのかとか雰囲気とかが途中でズレてます;;
そして今年はtri.記念もあって久々にリアルタイムではなく中学生設定となりましたが、まあ書いていて楽しいのなんの(笑)
かつての勢いを思い出しました。やっぱりタケヒカは私の原点です。
ではでは、お読み下さりありがとうございました!!

作成・掲載日:2015/08/03