[試験、終わった?]
[うん、無事終了♪]
[じゃあ、いつもの場所で]
「タケルくんっ」
駅から数分、目的地付近。
前方10メートルくらいのところから、声がした。
彼女が笑顔で僕を呼んでいる。「ここにいるよ」とアピールするかのように、手を振って。
自然と早くなる足取りと、笑顔になる僕の顔。
今日は、特別な日。
「試験どうだった?」
「バッチリ♪・・って言いたいところだけど、ちょっと不安かも」
「そんなあ。ヒカリちゃんなら大丈夫だよ」
エレベーターを待ちながら、手をつないで、笑いあう。
僕たちの行き先は、毎年同じ。
「・・・」
展望台についたとき、僕たちの顔に笑顔はない。
無言で立って、周りに見えないように、手を合わす。
観光客でにぎわう中、場違いだって、わかっているけれど。
「ウィザーモン・・・」
それでも僕らは、こうして黙祷をしている。
彼と、ほかの、たくさんの悲しい出来事に。
「ごめんね、いつも・・・」
エレベーターを降りて、ヒカリちゃんは言う。
「いいんだよ。僕だって今日来たいから」
暗い雰囲気で歩くのも、毎年同じ。
それでも、あとで笑顔になること、わかってる。
「いつもさ、ウィザーモンみたいなるって、約束してるんだ」
手をつないで歩きながら、ヒカリちゃんが少し驚いた顔をする。
「僕がヒカリちゃんを、テイルモンを守るって」
大切な人のために全てをなげうった人。
格好良くて、格好良くて、だからとっても悲しくて。
「だから、安心してねって」
そう、伝えてるんだ。
「・・・タケルくん」
「なに?」
足を止めたヒカリちゃんに振り向くと、いきなりほっぺたを掴まれた。
「にゃ、にゃに?」
「タケルくんは、タケルくんでいて」
拗ねたような顔で、ヒカリちゃんは言った。
「・・ごめん」
ヒカリちゃんは、少し笑って離してくれた。
大切な人を守れても、ずっと一緒にいなければ、悲しい結末のままだから。
だから、これからは・・。
「僕は僕のまま、2人を守れるヒーローになる。これからは、そういう言い方にするね」
近くにいること。それが、僕にできることだから。
「うん、ありがとう」
それなら文句ないわ、と、ヒカリちゃんは笑った。
「はい、これ」
ごほうびよ、と冗談を言いながら、ヒカリちゃんは箱を渡してくれた。
「ありがとう」
今年のプレゼントはなんだろう。
会わない時間が増えてから、開ける瞬間の待ち遠しさも増えてきた。
「それから・・・」
ヒカリちゃんは僕に近づくと、口元にそっとキスをした。
「お誕生日、おめでとう」
君に出会えた、今日に感謝。
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2012年の8/3記念作です。せっかく02から10周年の年だったのに、触れるの忘れてました(不覚)
今年は珍しくウィザーモンのことを絡めました。
というのも、漫画版デジクロでのウィザテがね、素敵すぎましてですね・・!
悲しみを乗り越える、という意味ではウィザテが最強かもしれない。。
とか言いつつもウィザーモンにはちょっとひどい話になっちゃったかもしれませんが、
ほんのり暗くてほのぼのらぶい、そんなタケヒカが書けて楽しかったです(何)
ではでは、お読みくださりありがとうございました!
作成・掲載日:2012/08/03