午前0時0分。夏の夜風が、窓から入ってくる。
電話越しに、祝福の声がした。

『タケルくん。二十歳の誕生日、おめでとう』

「ありがとう」
まだ、どこか実感がわかなくて、それでいて、落ち着かない。
「僕も、今日から大人だね」
大きな大きな、責任感。

『タケルくんは、ずっと前から大人っぽいけどね』
「それ言ったら、ヒカリちゃんだって同じだよ」
僕はいつも、この場所を目指して、背伸びをしてた。
それはきっと、君も。

『でも、私はまだ子どもだもん♪』
冗談めいた声で、ヒカリちゃんは笑った。
「ヒカリちゃんだって、あとほんの数カ月じゃない」
なんだか、さみしい。

『でもきっと、何も変わらないわよね』
僕のさみしいって気持ちが伝わったのか、今度は大人っぽい声で、しんみりと言った。
『タケルくんが今、変わらずタケルくんのままでいるように』
僕は、僕・・。

「そうだね」
大人になっても、変わらない、か・・。
「大人になるって、もっと格好良いイメージだったけどね」
小さいころの僕にとって、憧れで、格好良くて。

「タケルくんは充分、格好良いよ」

急に、窓から声がして、びっくりした。
「ひ、ヒカリちゃん!?」
振り向くと、ヒカリちゃんが笑顔で窓の外にいた。
「え・・?なんで・・??」

「サプライズ大成功☆」
いたずら笑顔で楽しそうにしてるヒカリちゃんの下で、ネフェルティモンが「おめでとう」と言った。
「飛んできたの・・・?」
近寄った僕は、あまりの驚きに呆れたように言ってしまった。

「だって、こういうことも子どもじゃないとできないでしょう?」
「・・そういうものかなぁ・・」
確かに無邪気な笑顔だけど、その姿は決して子どもではない。
でも、それでも。

「タケルくんも、ペガスモンと一緒に飛んでみない?」
きっと、大人とか子供とか、関係ないのかもしれない。
僕が憧れた大人は、いつだって、輝いていた。

「それも、いいかもね」
見た目とか年齢とか、そんなのに左右されるのが、大人ってわけじゃないよね。
「・・でも、さすがにちょっと恥ずかしいかな」
「あら。それじゃあ私が恥ずかしいみたいじゃない」
照れ笑いする僕に、ヒカリちゃんはむっとしたように言った。

子どもだから、今だから、そう思うと出来るのかもしれない。
きっとヒカリちゃんも、なにか、さみしいんだろうな。

「じゃ、少しだけだよ」
「やった!」
嬉しそうに笑うその顔は、本当に子どものようで。

「大丈夫だよ、ヒカリちゃん」
「え?」

「僕は僕のまま、ずっと、大人に憧れる子どもとして、成長し続けるから」
変わらないことはあるけれど、変わっていくところもきっとある。
「僕らはずっと、一緒に走っていこう」

ヒカリちゃんは、大人っぽく、微笑んだ。


さて、どうやってパタモンを起こそうかな。





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今年も一応、私の二十歳誕生日を思い出した感じだったのですが・・・。
またしても色々と中途半端でよくわからない内容になってしまいました;
そして、タケヒカ記念と言いつつイメージ的には恋人未満でもアリだなーとか思って書いてました・・。
でも、祝福だけはこめて!
タケルくん、ハタチの誕生日、おめでとうございます♪

作成・掲載日:2011/08/03