「ん?」

晴れた空、夏の雲。
熱き太陽の下、暑きコンクリートの上。

太一は、蝶を見つけた。


『 キミの物語 』


「…もう8月だぞ」
夏だというのに、蝶は飛んでいた。

「暑いのに、すごいね」
太一の隣でアグモンが、「僕も見習わなきゃ」とばかりに言った。

太陽の熱に、戸惑いながらも舞い、
時折、風に負けて落ちかかる。

「頑張れ」
無意識に、呟く。

負けるな、風に乗れ。

「太一さん」
太一が振り返ると、大きくなったのにも関わらず、定位置にパタモンを乗せているタケルの姿が。

「よ。お前もこれからか?」
「はい。お互い…早く行かないと遅れますね」
時計を見て、苦笑い。

「はは…じゃあ、行くか」

目を離した隙に、蝶はどこかへ飛んでいったのか、いなくなっていた。


「何見てたんですか?」
「蝶が飛んでてよ。この暑いのに」
「ぼくたちも見たよ。ね、タケリュ」
増えてるんですかね、とタケルも言う。

「ああ…そうかもな…」
しかし、太一はなんとなく不思議な気分だった。

「お兄ちゃん。タケルくん」
前方から、声がした。

「ヒカリちゃん」
「なんだよ。先に行ったんじゃなかったのか?」
「2人が遅いから迎えに来たの」
ため息混じりに言いながら、テイルモンにも相づちを求める。

「まだ間に合うと思うけど」
先程時計を見たばかりで、大丈夫なはずだとタケルは言ったが、

「…大輔くんももう来てるわよ」
「それは急がないと」
ヒカリの一言に、小走りになった。

「お兄ちゃんも、行くよ」
ヒカリも走り出し、太一もあとを追う。

前を走る2人を見るのは、なんとなく初めてな気分で、嬉しいような悲しいような。
しかし、太一も負けていない。

「お先っ」
あっという間に、2人を抜かした。

2人は、それを追いかける。
太一の背中を見ながら、「かわってないな」と、タケルは思った。

初めての冒険からずっと、追いかけていた。
でも、今は、新しい子供達が、タケル達を目指している。


「おーい」
公園に着くと、そこには全員が揃っていた。

「太一さーん!!」
「よ、大輔」
「太一さんおっひさー♪」
久々の再会に、声をかける仲間達。

「やっぱり太一さん速いなあ」
結局敵わなかった、とタケルとヒカリが公園に到着した。

「遅いぞタケル!」
「ごめんごめん。大輔くんがこんなに早く来るとは思わなかったから」
「お前なあ…素直に謝るくらいしろー!」
久々の掛け合いがされ、急に賑やかになる。

と、そんなとき、太一の目が蝶に止まった。

「どうかしましたか?太一さん」
「ああ…さっきから、妙に蝶が気になってなー」
「蝶?それなら私も見たわよ」
俺も、僕も、と、全員が蝶を目撃していた。

不思議だね、と話していると、ヒカリが足下に蝶がいることに気付いた。

なぜか、全員が会話をやめ、その蝶を見た。

飛んではいるものの、ふらふらと、今にも地面に落ちそうで。

「頑張って。私達が見てるから。ついてるから」
ヒカリは、蝶にささやいた。

「大丈夫。──僕達はここにいるよ」
タケルも、ささやく。

蝶は、少しずつ、少しずつ、昇っていく。

「飛べ」
太一は、その様子を見て呟いた。

「──舞い上がれ」

ひらり

無限大な夢に向かい、蝶は、飛んだ。──どこまでも。

「飛んだ!!」
「よっしゃー!!」
空高く、子供達の声が響いた。

「また、戻ってくるかな?」
「そしたらまた、応援してあげよう」
タケルの声を聞き、太一も高く舞い上がった蝶に、心で応援をした。

──頼りなくてもぎこちなくても、きっと飛べる──

「“力は、無限大”だからな」





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07年8/1記念作です。
今年はふんだんに公式の歌詞を入れちゃいました。(^^;)
「勇気を受け継ぐ子供達へ」「ヒラリ」「Butter-Fly」です。
「──○○」や、「“○○”」などがそれです。
タイトルは、「an Endless tale」イメージで。
話の内容は変梃ですが(いつものこと)、歌詞ミックスは好きです♪(意味が変わってしまうのが難点…)
ただ、これだけ入れると入れすぎてマズイ気もするんですが;;
デジソングって、基本良い曲だらけなので、色々入れたくなって大変でした。

さて、今回は太一さんにスポット当ててみました。意外となかったんですよね…メイン。
それに加え、影の主人公タケルと、世界で初めてデジモンに触れた(んでしたよね?)ヒカリ。
蝶は作者自己投影ですかねー…。でも、彼ら全員に見られてたら緊張して飛べない。(笑)
でも、それでも、支えられてます。大切です。大好きです。
2007年もデジモンで生きていきマス!!!(あ、宣言した)
というわけで、お読み下さりありがとうございました!!

作成日:2007/07/25
掲載日:2007/08/01