「お互い、酷い目に遭ったね」
 言葉の重さとは真逆に、笑顔でタケルは言った。
「まさかこっちで誘拐されるなんてね」
 ヒカリもまた、何気ない日常の言葉のように、物騒な単語を口にする。
 “こっち”と称されたリアルワールドにて。
 カフェで寛ぎながら、タケルとヒカリは談笑していた。
 隣では、それぞれのパートナーデジモンもまた、憩いの時を過ごしている。
「怪我とかなくてよかった。そのあたりはわりと注意払われてそうだったし」
「もともと、人質の役目だったもんね。動画見てびっくりしちゃった」
 今は削除されているものの、スクショやらコピーやらは相変わらず出回っている。
 ただ、そんなこともふたりには些末なことだった。
 なにせ、慣れているのである。
「また、勝手にまとめられちゃうのかなー」
「これまでの冒険の記録みたいに?」
「みたいに」
 もはや苦笑いも通り越し、笑い合う始末。何やら薄ら恐ろしい。
「僕たちはほとんど最初から、デジモン関係の事件に絡んでるからね。標的にはもってこいなんだろうなあ」
「それだけ画像も残ってるもんね。最初のうちはみんな心配してたけど…」
「結局、直に手は絶対出して来なかったからね」
 理由は明白だ。それぞれの写真には、屈強なデジモンたちも写っているのだから。
「だから油断しちゃったなー。それどころじゃなかったし…」
 自身を狙う誘拐事件なんかよりも。
 隣りにいるパートナーとの別れのほうが、大事件だ。
「でも、何があっても、大丈夫よ」
 タケルの視線を追ってか、ヒカリは希望の言葉を口にする。
「また、絶対に会えるから」
 いろんな別れを経験した。たくさんの別れを見てきた。
 そのすべての人たちに、幸がありますように。
「メノアさんも、いつか」
 ヒカリは、確信に満ちたように、呟いた。 
 そっとテイルモンの頭を撫で、ほほえむ。
 この時間は永遠ではないことは、確かかもしれない。
「僕たちは、やれることを、やって行こう」
 きっと、できることがあるはずだ。
 別れないで済む方法ではなく。また、会える方法を。
 かけがえのない存在だから。きっと何度でも巡り逢える。
「思うんだよね。もし、パタモンに出会ってなかったらって」
 タケルもまた、パタモンを撫でながら言う。
 お別れなんてしたくない。ネバーランドにいる間、確かに幸福だった。
 でも、未来のほうが、輝いている。
 光と希望に、溢れているんだ。
「パタモンと出会えたから、色んな経験をした。ヒカリちゃんにも出会った」
 出会えたから、今がある。
 その今を、未来に繋げたい。
 それこそが、共に過ごした過去への、最高のお礼だ。
「たとえこの先何があっても、僕はヒカリちゃんのそばにいるよ」
 未来への希望を。ここに約束して。
「ありがとう。私も、ずっとタケルくんと一緒だよ」
 互いに、きっとこの先も、運命を共にするのだろうと。
 密かな確信を持って。
 そっと、互いの手を重ね合わせて。
「ヒカリちゃんに会えて、よかった」
「……私とタケルくんはきっと、出会う運命だったんだね。他の、世界でも」
「え?」
 ヒカリはふいに上を向いた。
 視線の先は、カフェの天井。なのに。
「……羽根?」
 2枚の白い羽根が、どこからか、舞い降りてきた。
「タケルくん」
 羽根は、ふたりの手の上へと。
 ヒカリは、タケルを見た。
 あたたかく、光に満ちた瞳で。 
「ヒカリちゃん」
 タケルもは、うなずいた。
 希望を、込めるように。

 どこかの世界の僕たちへ。
 光と希望を贈ります。
 また、出会いますように。





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タケヒカ記念作…の予定だったのですが!!なんとここに来て!!!
タケルの誕生日であることを忘れるという大失態!!!!(笑)
ていうか記念日も祝ってねえ!!!
ということに気づいた(というか去年の読んで思った)ので、これは別途アップになりました。
毎年書いてもう15年目?なのに忘れるとかあるんですね…。オトナコワイ…。
(※遡って読んでたら過去にも近いことしてましたね…ていうか毎年忘却具合やばい…)

さて、気を取り直して。元々のあとがきです。
ラスエボのふたりは結構な目に遭いましたけど、平然としてそうだな〜と。
そして無理やりになっちゃいましたが、「:」のふたりに向けてのエールを込めて。
情勢のせいもあって、未だにタケヒカ出会ってないどころか全然出番が…!!(笑)
ラスエボはほんっっと、家族でしたね、タケヒカ…。
tri.を経た世界線なので、あの世界線でのふたりは自然と結ばれてくれてそうだな〜とか思ったり。
「:」はどうなるのかな〜。今のところ二人揃って不思議ちゃん枠ですが、つまり最強枠なのではとわくわくしてます。
出会う瞬間を今か今かと待ちわびてます。光ミミのように「はじめまして」が聞けたら大興奮ですよ!
無印でも初対面でしたけど挨拶どころじゃなかったですからね、タケヒカ…。
お互いのファーストコンタクトが楽しみでなりません。初セリフ何になるかな〜!!
まさか出会うより先に紋章でタマゴ生むとは思いませんでしたよほんと。あの瞬間タケヒカの子供!?ってなったわ。
ととと、うっかり「:」タケヒカ語りになりました。出会ってもねえのに語り尽くせないほど萌えてる。
ラスエボもまた円盤堪能したいです。メノアさんも大好き…。ここで語ることじゃない…。
というわけで、タケヒカ記念日でしたー!もうこれも記念作ってことにする!!

作成日:2020/8/2
掲載日:2020/8/3