中学生になって、周りも色気づいてくる頃。
新しくできた友達が、アカリに聞いてきた。
「あのさぁ、工藤先輩って、アカリの幼なじみなんだよね?」

『これは、いつもの物語』

「うん・・そうだけど?」
たくさんの運動部、のみならず文化部にまで助っ人に参上しているタイキは、
相変わらずの人気と知名度を誇っていた。
とはいえ、アカリにとってそれは当たり前のことで。
「いいな〜。うっらやましー♪」
「タイキさんって、小学生の時からすごかったもんね」
小学校からの友達も、会話に加わってくる。
「まあ、タイキにとってはいつものことなんだけどね」
苦笑いしながら、ちょっとだけ嬉しそうにアカリは言った。
こんな対応も、いつものことだったりする。
「呼び捨てか〜。いいな〜幼なじみ!マジあこがれるー」
「え?ああ・・・さすがに、マズイかなあ?」
小学生の時はあまり上下関係に厳しくはなかったけれど、
中学生だと、ちょっと睨まれるかも。
「まずくはないと思うよ。ただ、付き合ってるみたいだけどね」

「え、えええ!?」
中学の常識について考えていたアカリは、思わず驚きの大声を上げてしまった。
「そんなに驚かなくても・・」
からかい半分で言った友達も、少し苦笑い。
「だ、だって、そんなこと、思ったこと、なかったし・・」
急に照れくさくなって、赤くなってしどろもどろ。
心臓が、まだドキドキしている。
「え?なになに?どーゆーこと??アカリって、工藤先輩の彼女なの?」
「いや、だから違うって!!」
「え、でも、どー見ても照れてんじゃん・・」
怪訝な顔でアカリを見つめる友達に、思わず目をそらしてしまう。
「でも、タイキさんってそういう噂とかないし」
「そうそう!そういうの興味ないんだってば!」
助け船を出してくれた友達に、アカリはすぐさま乗っかった。
が。
「そうじゃなくて、アカリがいるから、そういう噂がないってこと」
「ぇぇえ!?そう言う意味・・?」
残念ながら、彼女ポジションとして認識されているようで。
「てかさ、そんなに否定するなら、聞ーてみよーよ」
「ぇえ!?」
「あ、それいいかも。アカリ、今日もタイキさんと帰るんでしょ?」
「まあ、明日のスケジュール確認もあるし、そうだけど・・」
困惑するアカリに、「じゃあ、決まりね」と、友達は笑顔で言った。


そして放課後。
「アカリー」
教室に、タイキがやってきた。
「ちょ、タイキ・・!」
「どしたアカリ?そんなに待たせちゃったか?」
焦るようにタイキに近づいてきたアカリに、タイキは謝った。
「いや、そうじゃなくて・・」
「工藤先輩!」
約束通り聞く気満々の様子で、友達が声を掛けた。
「ん?なんだい・・ってアカリ?」
「ご、ごめん、その話はまた今度で!!」
アカリは大声でそう言うと、タイキの手を引っ張って廊下を駆けていった。

下駄箱まで辿り着くと、アカリは漸く立ち止まった。
「よかった、追ってきてはないみたい・・」
息を整えながら確認していると、タイキが隣で不思議そうな顔をしていた。
「あ、ごめん、タイキ・・」
「いいよ。別に。ただ、廊下は走っちゃダメだろ〜」
タイキは普段と同じ笑顔で、アカリを注意した。
「んじゃ、帰るとするか」
そして、何も気にしない様子で、下駄箱に向かう。
「(いいのかな、これで・・・)」
上履きから外靴に履き替えながら、どこか、アカリは納得がいかなかった。
「(べつに、タイキに聞きたいわけじゃないし、気にしないでくれるのはありがたいけど・・・)」
どこか、もやもやするような、心に引っかかりが残っている。
「(やっぱり、聞きたくないわけでも、、ないんだよねえ・・・//)」
どう思ってるかなんて、そんな直球で聞きたくはないけれど、
だけど、ほんの少しだけ、知りたい気がする。
「(タイキって、あんまりこういうことに興味なさそうだしなあ・・・)」
「アカリ?どうしたー?」

「ああ、ごめん!すぐ行く」
とっくに履き替えて待っていたタイキに、慌ててアカリは駆け寄った。
いつも通り。夕焼けの中を、2人で並んで歩くのは。
「(・・・そりゃあ、誤解もされるよね)」
傍から見れば、付き合ってると見られても、なんらおかしくない状況。
「(タイキは、そうやって誤解されたら、どうするんだろう)」
1人悩み考えて、気付けば学校から離れていく。
タイキはその間、何も話しかけて来ないまま、アカリを見守っていた。
「(んー、こうやって悩んでても、タイキに言えば、へらっと返してくるんだろうなあ・・・)」

「あのさ、タイキ」
ようやく口を開いたアカリに、タイキは普段通り「どうした?」と聞いてくる。
「今日、ね、友達に、タイキと付き合ってるの?って聞かれちゃって」
少し早口気味に、下を向きながら、話し出す。
「もちろん、そんなことないって言ったんだけど、なかなか、わかってもらなくて・・・」
本当のことなのに、語尾が少しずつ、小さくなる。
「それで、タイキだったら、なんて返すのかなーって、思って・・・」
どこか言い訳のように、モゴモゴと、アカリは言った。

「そうだなー・・・うーん」
考えたことなかったかのように、タイキは答えを探していた。
「(やっぱ、タイキもよくわかんないよね・・)」
変なこと聞いちゃったかなと思いながら、今更取り消すこともしたくない。
少しして、タイキは答えを見つけたように、微笑んだ。

「たぶん、『今は付き合ってないけど、いつかそうなると思う』って、言うんじゃないかな」

「・・・え?//」
「いや、だって、そうだろ?」
驚いて立ち止まるアカリに、タイキは振り向いて、キョトンとした。
「互いに今はよくわかってないんだし、わかったとき、そうなれば良いさ」
な?と、タイキはアカリの肩をぽんと叩いた。

「いや、だ、だから、それって・・!」
「でも、よかった。アカリの悩みがわかってさ」
動揺するアカリの言葉をかき消すように、タイキは言った。
「様子がおかしいから何かあったのかとは思ったけど、友達と喧嘩したとかじゃなくて、ほっとしたよ」
そういうタイキの表情は、見る人に安心感を与えるような笑顔で。

「タイキ・・・」
今はまだ、誰にでも手を差し伸べるタイキを、隣で手伝えれば、それでいいのかもしれない。
なんとなく、アカリはそう思い、笑顔になった。

「・・まったく、ほんとにへらっと返しちゃうんだから」
「え?」
「なんでもなーい」
そうなることは、明日のことかもしれないし、何年先かもしれないけれど。
ただ、未来に向かって、一緒に歩んでいこう。




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初タイアカでした・・!!
・・何度も「アカリ」を「ヒカリ」と打ってしまいました;;
そして、タイキさん、キャラ難しいです・・!
なんだか、2人とも雰囲気的に漫画版準拠っぽいなと思いました。
あと、勝手にお友達キャラ入れちゃいました;
元々後半だけあればモーマンタイだったはずなのですが、思いのほかシーンとして気に入ってしまったもので…(^^;)
そういえば、リアルタイムに放送されてる作品のものを載せるのは、初ですね・・!
実はこれ、2期終了間際からちまちま書いてたのですが、なかなか進まず放置になりかけてました;
しかし、来週日曜にアカリが3期に登場するため、設定違いのこのネタは早く消化せねば、と(笑)
永遠のお蔵入りになるよりは、日の目を浴びせられて幸いです。
というわけで、お読みくださりありがとうございました!!

作成日・掲載日:2011/11/24