粉雪がちらつく外も見ず、暖かい部屋で机に向かう少年は、
なにやら難しい問題にでも直面したようで、先ほどから何かを考えているご様子。
「…いつまで見てるの?タケリュ」



『少年・少女を見守って!』



「タケリュ?たーけーりゅ!」
「え?パタモンなにか言った?」
「さっきから呼んでるよ!」
怒った口調ととぼけた返事。よっぽど深く考えていたのでしょう。

「ヒカリにもらったチョコ、まだ食べないの?」
きれいな机にぽつんと残る、小さなチョコの袋詰め。

「1個は食べたよ。もらってすぐに」
「…おいしくなかった?」
「まさか。ヒカリちゃんが作ってくれたチョコだよ?おいしいに決まってるよ」
惚気ているのかいないのか。無意識に言ってのけたそれは、まるで彼氏か両思い。

「じゃあ、全部食べちゃえばいいのに」
「うん、そうなんだけどさ…」
おいしいと言ったはずなのに、なぜか表情がイマイチのまま。

「やっぱり、大輔と一緒にもらったのがイヤだったんだね」
グサッ。と何やら刺さった音が。
「今年もみんな一緒だったもんね」
グサッグサッ。とまたもや刺さり音。
「ハート型のチョコも入ってないし」
グサッグサッグサッ。少年は大丈夫でしょうか?
「去年のケーキのが、ヒカリ、頑張ってそうだったも」
「いいかげんにしろ!」
ついに、珍しく大きな声で、怒り出しました。

少しの静けさが、2人の間に流れました。
ちょっと気まずそうな少年に、にっこりと笑って言ったのは、
「『好きって』言っちゃえばいいのに」
・・・火に油を注ぐ発言でした。

「それが出来ないから、悩んでるんだよ」
苛立ちながら、暗い顔で少年は続けました。
「言っても、変わらないなら、まだ良いんだけどね・・」
寂しそうに言うその姿に、パタモンはちょっとだけ反省。
でも、気を取り直して。

「タケリュ、このままでいいの?」
「・・・・・・」
返事はありません。
でも、何かを考えているみたい。

「なんとなく、さ」
しばらくして、少年は口を開きました。
「このままってわけにはいかないのは、わかってるんだ」
良くも悪くも、と付け加えながら、苦笑いのような表情で。

「このチョコレート、去年のケーキと違う味なんだ」
「え?」
謎かけみたいな変な言葉に、「違うものだからじゃないの?」とパタモンは傾げます。

「なんて言うのかな、僕と同じって言うか、僕が望んでいたものって言うか…」
自分でもなんと言っていいのかわからない、といった顔で、少年はやっと、
チョコレートを口に運びました。

「・・・おいしい?」
パタモンがそう聞くと、少年は目を瞑りながら、ゆっくり、じっくりと味わうようにして、
「うん」
そう、一言言いました。



「おはよう。ヒカリちゃん」
次の日の朝。学校への、通学路。
「タケルくん。おはよう」
いつもの笑顔といつもの笑顔。
「今日も寒いね」
どちらともなく、いつもの言葉。
いつもとちょっぴり違うのは、そこに観客と応援が。

(「チョコの話、しないのかな?」)
(「黙って。ヒカリがなにか言うわ」)
2人と離れてこそこそ隠れて。
パタモンとテイルモンは、じーっと見守っています。

「あの、タケルくん」
「ん?」
見上げて少年を捉えると、あのね、と少女は赤くなる。
(「頑張って、ヒカリ…!!」)
テイルモンが祈ります。

「きょ、今日も寒いね」
どてっっ。

(「ひ、ひかり〜;;」)
(「女の子ね、ヒカリ・・・」)
パタモンとテイルモンが影でコケてるのに気付いたか、少年・少女は振り向きました。

「…?気のせいかな」
少女の呟きに少年は答えず、また、何かを考えているようで。
「タケルくん?」
不思議そうな少女の声に、少年は決心したのか、真剣な表情で向き合いました。

「バレンタインチョコのことだけど」

時と空気が止まったようで、影の2人も固まります。
「違ったら、ごめんね。その、なんて言うのかな・・・」
頭を掻きながら、焦ったように緊張したように、少年は言葉を探してます。
「去年よりおいしくて、なんだか、僕には・・」

静かな冬。道路に雪。
生徒の姿と、車が通り、

少年の口は、何かを言いました。


「・・そう、思えてさ。き、気のせいだよね」
誤魔化すように、少年は慌てて笑顔を取り繕います。

(「え、今タケリュ、なんて言ったのかな?」)
(「わからない・・」)
テイルモンは、不安そうに少女を見つめていました。
何を言われたのか、少女のその表情は、いまにも。

「ごめんね!変なこと言って・・」
走り去りたそうな少年を、驚いた顔で、泣きそうな顔で、
「タケルくん…」
嬉しそうに、少女は言いました。

「え?じゃあ…ほんとに…」
「うん。タケルくんの言う通り」
すごく無邪気で可愛い笑顔。飛び跳ねそうなその姿に、
少年も、パタモンもテイルモンも、
「ヒカリちゃん」
皆、泣き出しそうな笑顔になりました。

「ありがとう」

今日も雪が降ってきます。




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な、なんだかなにがなにやらな感じですみません;;;
もっとわかりやすくすれば良かったのに、なぜかこんな変な形に・・・。
今年は甘々系バレンタインに、と思っていたら、なぜか絵本口調に。。
パタテイルは珍しいですが、活躍具合がわかりづらく申し訳ないです;
色々とご想像におまかせ下さい状態な感じでアレな出来ですが、
お読み下さりありがとうございました^^

作成日:2010/02/13
掲載日:2010/02/14