大きな木の枝を蹴って、森を走る。
戦争が終わってから、久々の里外任務だ。
ナルトが火影になって、サスケくんが里に戻ってきて。
私は医療忍者の育成に取り掛かっていて。
あの頃は想像もしていなかった未来を、こうして踏み出している。
平和に向かって進み始めたのは嬉しいけど、どうにも実戦での勘が鈍っている気がする。
みんなを指導するひとりの忍として、これじゃあまずいわね。
今回みたいな救援任務も入ってくるんだから、しゃんとしないと。
そんなふうに気ばかり焦って、緊張が空回りしていたらしい。
「!?」
前方に人の気配。
反射的に木の影に身を隠すけど、気が付くのが遅かった。
おそらく相手にも気配を気付かれている。
敵だったらまずい。どうしよう。
もっと早く気付いていれば、ルートを変えられたのに。
だめ、冷静にならないと。久しぶりだからって混乱しすぎ。
自分で自分を叱って一呼吸。
大丈夫よ、サクラ。

よし。
落ち着きを取り戻して、クナイを握る。
気配が近づく。
空気が変わっていく。
張り詰めた緊張感と警戒心。
一人前の忍となった今でも、油断なんて生まれない独特の空気。
何歳になってもこれに慣れることはないだろうし、あってはいけないことだろう。
気配が動き出した。
私の体も咄嗟に反応する。
木を蹴って距離を取りながら、相手を視認し──

「・・・サクラか」

警戒を緩めた気配が、そう言った。
「サスケくん!?」
気配の正体は、サスケくんだった。
途端に空気が和らいで、暖かさまで感じてくる。
「これから任務か?」
サスケくんが訊いてきた。
木の葉の忍服姿はもう何度も見てるのに、嬉しい違和感が駆け巡る。
「うん。サスケくんは、帰り?」
「ああ」
「そう・・お疲れさま」
こんな何気ない会話が当たり前になって、もうどれくらい経つんだろう。
「それじゃあ、私急いでるから」
ずっとその場に居たいのに、居たたまれなくなって私は走りだした。
事実、早く任務を果たさなければならないのだ。
なのに、足が震えてくる。
おかしいな、鍛錬は怠ってないはずなのに。
なのに、体が震えてくる。
おかしいな、なんの術にもかかってないのに。
なのに、目の前がぼやけてくる。
おかしいな、涙が溢れてくる。

頭のなかで反芻してるの。
『・・・サクラか』
さっきの、サスケくんの声が。
きっと、何度も聞いたことのある言葉。
時にひどく冷たくて、時にとても遠かった、私への呼びかけ。
『・・・サクラか』
それが、とても優しい声だった。

「サスケくん・・!」
思わず声に出してしまって、足が止まってしまう。
子どもみたいに泣きじゃくって、嬉しいんだかなんだかわからない。
ただ、さっきの優しい声が、忘れられなくて。
もう戻らないと、もう聞けないと思っていた、味方としての、声が。
「サスケくん・・」
私のこの、変わらない呼びかけに、また答えてくれるんだ。
「サクラ」
不意に、後ろから声がした。
忍なのに背後を取られるなんて不覚、と思うよりも早く、背中に温かさを感じた。
そして、ぎゅっと腕に包まれて。
後ろから抱きしめられたんだと、ようやく認識した。
「さ、サスケくん!?」
身動きが取れなくて、抜け出したくなくて、でも任務中で・・。
混乱しつづける私に、サスケくんの声が届く。
「変わらないな・・」
予想より耳元で聞こえて、近い距離にいるんだと心臓が高鳴って告げてくる。
そうだ、あの頃はいつも、こうやってドキドキしてたんだ。
昔を思い出して、変わっていなかったことに、なんだかホッとした。
私たちはちゃんと、あの頃の未来を歩いているんだ。

私にもたれ掛かるようにして、サスケくんは言った。
「・・・安心する」
背中の向こうであなたの心臓も、高鳴っているのにね。





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2014年5月にエアプチに参加させてもらったときのものです。
ちなみに陣中見舞いというタイトルはただの名残です。もともと主催様への激励用だったので…。
本来はそれっぽい話にするつもりだったのですがどうしてこうなった。
でも、今でも雰囲気は好きです。
以下、当時のメモが残ってたので抜粋。
サスサク初書きでどきどきでした…!ああ拙くて申し訳ないです;;
しかも暗いしサクラちゃん泣かせてるし・・ああ;;
個人的に、サスサクは悲恋を乗り越えた先にあるのがオイシイですw
原作は佳境を迎えてるけど、サスケくんにはぜひまたサクラちゃんにありがとうを言ってほしいです。
女の子あんなに泣かせたんだから、責任とるべきですよ!
…とまあ以上抜粋なのですが、当時まだまだそういう時期だったのだなあと…笑
このあとまさか本当に責任とることになろうとは。これぞリアタイの醍醐味って感じですね。
楽しい機会をありがとうございました!

作成日:2014/5/4
掲載日:2019/3/30