白い地面を滑り降り、止まっては、振り返る。

まだ坂の上にいる彼に手を振って。



『あくまでも天使』



隣にぴたっと止まったタケル君に、思わず、

「うまいね」

なんて、言ってしまう。

「ヒカリちゃんこそ、すっごく綺麗に滑るね」

「そうかな?」

「ついつい見とれちゃったくらい。天使みたいで」

…さらりと言われ、一瞬思考が追いつかない。

初めの一言だけでも心臓が動くのに、

さりげなく追加された言葉に、顔が赤くなる。

「天使って…どう見たらそうなるの…//」

「雪の白さが雲に見えたから、かな」

「…それだけ?」

普段のまま、いつも通りの一言。

冗談なんだか、本気なんだか。

「そのまま見ても羽は生えてないわよ」

見分けがつかないし、照れ隠しもあって、たいてい、こんな返事をする。

「でも、僕にとってヒカリちゃんは天使みたいなもんだし」

「え…?」

それでもいつも、一枚上手。

慣れてるはずなのに、いっつも引っかかってしまう。

「そのまんまの意味だからね」

にっこりと笑って、照れてる様子もなくて。

「じゃあ、私にとってタケルくんは何みたいなものだと思う?」

だから、たまには仕返し。

「え…?」

タケルくんの顔が、考える表情に変わっていく。

「答えがわかったら、降りてきてね」

その表情が変わるよりも早く、私はまた滑り出した。

言われてみれば、雪の白さは天国みたい。

…天国見たことはないけど、きっとこんな風に綺麗なんだろうなあ。

この勢いのまま飛べたら、本当に羽が生えて飛んでいけそうな気がする。

そのときは、もちろんタケルくんも、いっしょに。

止まって、坂の上を見ると、タケルくんはちょうど滑り出した。

その様子はたしかに、羽でも見えてきそうなほど。

何がそうさせるのか、環境の所為だけじゃない。

タケルくんは、また、ぴったり私の隣に止まった。

「答え、わかった?」

意地悪な笑顔でそう聞くと、

「ごめん、降参」

滅多に見られない、『負けた』表情が見られた。

「うふふ…」

珍しく勝てて、笑いが止まらない。

「そんな笑わないでよ〜。わからなかったんだから」

まるで小さい頃のように口を尖らせて、ちょっと拗ねた顔。

「わかったわかった。正解はね」

私は、タケルくんの肩に手を置いて、「しゃがんで」と合図をした。

タケルくんは、すぐにしゃがんで、耳を近づけた。

でも、本当は耳打ちじゃなくって…。

「!?」

頬に、私からの、口づけ。

「私も、タケルくんのこと、天使に見えるよ」

耳元で、タケルくんにだけ聞こえるように、うきうきしながら言った。

だって、すっごく嬉しくて楽しかったんだもん。

タケルくんの顔、驚いてて少し赤くなってたから。

そんな顔、1日で1番長く一緒にいる私でさえ、見たことないのに。

自分がされるといっつも恥ずかしくなっちゃうけど、

いざやってみると、私しか見られない表情が見えて、とにかく嬉しくて、幸せな気持ちになる。

「あっはははは」

その反応が可愛くって、面白くなっちゃって、笑いを抑えることが出来ない。

周りも気にせず大きな声出しちゃったけど、すぐに止められた。

腕を引っ張られたから。それから、肩を寄せられて、それで…、

…唇に、触れているものがあって。

すぐに離れたけど、でも…。

「ヒカリちゃん…反則だよ…//」

「ど…//どっちが…?////」

さっきまでの気分もどこ吹く風。

また、いつものように、恥ずかしくも嬉しい感覚が。

「だってヒカリちゃん、普段あんなことしないじゃん…//」

びっくりしたんだから…と、タケルくんはまだちょっと赤い顔のまま言った。

それは嬉しいけど…。

「でもタケルくん。…動くの早いよ」

私だったら、すぐに反撃になんて出られないのに。

今もまだ、タケルくんの腕に顔埋めて、なかなか上げられない。

さっきの私の笑い声で、周りのお客さん達こっち見てたから…余計に上げられない。

でもまあ、いいかな。

また次のチャンスに、反撃もできないくらい、びっくりさせてあげるんだから。

だから、今回は許してあげるね。





戻る

遅くなって申し訳ないですーーー!!!!
10101番キリリクの「タケヒカでスキーもの」です。
いやはや…もう6月入ってしまいました;;
スキー、管理人がやったことないので、たぶん矛盾もあるかと。
そのあたりは…見逃してやって下さい。(--;)
そして、何がきっかけか、当サイト初であろうタケ様負けシーンです。(笑)
でも、なんか文章いつも以上にガタガタな気が…。
何か色んな意味ですみませんです;;
とりあえずちょっと補足。
タイトルは「悪魔でも天使」という意味も含んでます。
タケルくんとしては、「天使じゃなくて、悪魔みたいなのに…」とか思ってるとかいないとか。(何)
この、「天使か悪魔か」とか動揺するタケルくんとか、シリアス面にも出来る感じで…。
実は、タケルくんの心情はちょっとシリアスだったり。
その辺りの所は、書き出すと止まらなそうなので、今回は自主規制で。(^^;)
それでは、このような駄文&短文で申し訳ありませんが、
10101番ゲッターのパール様に、これを捧げます。
リクエスト、ありがとうございました!!!

作成・掲載日:2007/06/03