『暇つぶし観察日記』





「あっつい〜」


ある夏の昼下がり。

東京のコンクリート上よりはいささか涼しい夏の中。

少年はテレビを見ながら1人うなだれていた。



「いい加減になさい!!夏は暑いのが当たり前でしょう!?」


そこに現れたのは、汗だくになった少女。


「うるさいなー!暑いもんは暑いんだから、しょうがないだろう!?」

「なんですかその言いぐさは!!暑いのなら暑いで、何かやるべきことがあるでしょう!?」

「何があるって言うんだよ!だいたい今時、クーラーも扇風機もない家なんて、考えられないだろ!?」


暑さのせいか、2人はイライラを隠せない。

まあ、いつものことか。


やがて、少年は少女の後ろにある、古めかしいものに気がついた。


「せ、扇風機!!」

目を輝かせる様子は、まるでお宝を見つけた子供のよう。
…なーんて言ったら、あいつ怒るだろうな。

しかし、少年はまさにそのように駆け出し、少女に聞いた。

「なんだよ。お前のか?これ」

「はい。先程おろしてきました」

なるほど。そのせいで汗だくだったのか。

「やったー!」

持ち主の許可も聞かずに、少年はコンセントを差し、スイッチを押した。


「…あれ?」

「壊れてますが」

少女の冷淡な一言に、少年の温度はどんどん上がる。

「お前…性格悪いんだよ!!壊れてるなら壊れてるって、先に言えよな!!」

「何も聞かないあなたが悪いのでしょう?」


そしてまた始まる喧嘩。

今度はいつまで続くのやら・・・。


結局、もうそろそろ家主が帰ってくる時間にまでなってしまった。


「ああもうこんな時間!お夕食が遅れるのは、あなたのせいですよ!
 あなたがくだらないことばかり言っているから…!」

「なんだと!?時間配分もできない、お前の方が悪いんだろ!?」

って、そんなことしてると、ほんとに帰って来るぞ…。

「とにかく、今日はあなたのご飯は抜きですからね!!」

「はあ!?なんでそうなるんだよ!」

「当たり前でしょう!?買い物が出来なかったので、昨日の残りですまさなければならなくなってしまったのですよ!?
あなたの分など、ありません!!」

「…ぅ」

おっと。さすがの少年もついに降参か?

「ああ、わかったよ!好きにすればいいだろ!リクに言われるのはお前なんだからな!」

そうきたか。たしかに、また初日みたいにはなるだろうな。

「な…!」

「まあそれに、お前の和食ばかりの料理なんて、ない方がましだしな」


この言葉に、今度は少女の方の温度が上昇。

またしても喧嘩が始まるかと思われた。

が…。


「ただいまー」

おとぼけ家主のお帰りだ。


「おじゃましまーす」

「あ、扇風機!つけていいー?」

お騒がせのお仲間さんも登場か。


「お帰りなさいませ、リク様」

「お帰り。……モモちゃん。それ、動かないよ」

「えーー」

「おい上善寺!涼んでないで準備しろ!!」

「涼んでなんかないわよー!オンボロで故障してるからー!」


なんやかんやと、お騒がせの面々が騒いでる中、逆に2人の温度は平常に戻ったようで。

お互い特に何を言うでもなく、それぞれの定位置にと戻っていった。




「あ〜〜。涼しい〜」


しばらくして、少年が声を上げた。

少女が振り向いてみれば、そこには散らばった工具の中に、扇風機に当たっている少年の姿が。

少年は少女の視線に気付き、お前には当たらせないぞ、と、にんまりと目で語った。

少女は、色々と言葉を選んでいるようだが、結局選ばれたのはいつものようなものだった。


「使った物はちゃんと片づけなさい!まったく…子供ですね」

「こ、これからやろうと思ったんだよ!!なんだよお前は…せっかく直してやったのに…!」

「あなたに直して下さい、と頼んだ覚えはありませんし、それにこれは捨てるつもりでした」

「それでもこれはお前のものだろー!?」

また始まったか。これで今日は、午後だけで4度目。

午前中と合わせれば、8度目だ。

まだまだこれからだな…。


そう思って聞くこと10分間。

少女の顔色が、赤く変化した。

「ま、まあ、今回ばかりは大目に見るとしましょう…」

珍しく、視線を真っ直ぐに向けず、下を見ている。

「な、なんだよ…!どーゆー意味だよ!それ!」

気付けよソーマ。

ほんとおまえ、こういうのって、鈍感だよな…。

「ですから、今回のことは…その…お礼を」

「ああーーー!扇風機、直ってるーーー!!」

う、肝心な時に…!!

「うわ〜。すごいねソーマ君。直せたんだ」

「さすが大学卒業だね〜」

「いや、別にこれくらいのこと…」

「こらお前達!!まだ練習おわってねーぞ!!」


ばたばたと騒がしい連中が元の場所に戻っていったときには、もう遅かりし。

少女は続きの言葉を言わずに、台所へと夕飯の支度の続きをしに行った。

少年は少年で、そんな少女の態度に首を傾げつつ、扇風機に当たっていた。



台所にいるもう1人の式神を見ると、俺と同じで落胆した様子だった。


2人が仲良くなるには、どーやらまだまだ、時間がかかりそうだ。



“…でも、邪魔さえ入んなきゃなぁ…”

「ん?フサノシンなにか言った?」


…さて。なんと答えようか。




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はい。遅くなりましたお待たせしました。キリリク「神楽さんのサイトで取り扱っているジャンル内」 です!
うきゅう〜。なんとか終わりましたと言うか短い気がしますと言うか…。
わけがわからないと言うか、公式設定無視してる気がすると言うか…。
とにかく、駄文&短文すみませんです。。。
1000番ゲッターの神楽鵺様に、これを捧げます。
リクエスト、ありがとうございました!!!

作成日:2006/06/25
掲載日:2006/06/26