「…大好き」


「ヒ、ヒカリちゃん今なんて…!?」



今日も今日で、デジタルワールドの冒険が終わりました。

そして、いつものように、大輔さんがヒカリさんとタケルさんと話…と思われるものをしています。

…今日はどうやら、タケルさんが貸した本について、ヒカリさんが感想を述べたところ、

大輔さんがそれをタケルさんに向けたものと勘違いしたみたいです。


「もう、大輔ったら早とちり〜〜」

いつものように、京さんが大輔さんをからかい、

それを聞いて、みなさんが笑う。

いつものいつもの、日常の風景。


でも、最近僕は思うんです。

タケルさんとヒカリさんについて。

2人は、前の冒険をした人、と言う意味以外にも、

何か僕たちとは違う空気を持っている気がします。

京さん曰く、「付き合ってるからでしょ?」

大輔さん曰く、「誰が認めるか!!」

…僕には、付き合ってるとかそういうものはわかりませんが、

ただ、お二人はお互いを特別な存在だと思っていることは、わかる気がします。



「あ、メールだ」

帰り際、京さんがお店の手伝いをしにコンビニに入ってから、

タケルさんのDターミナルに、メールが届きました。

「光子郎さんから。『先日の伊織君の質問、答えがわかりましたので、至急お越し下さい』だって」

「あ。はい」

先日、僕はふと思った疑問を、タケルさんに聞いてもらいました。

結局、2人で相談しあった結果、光子郎さんに頼むのが一番だ、ということになり、

相談をしに行ったのです。

「じゃあ、行こうか」

タケルさんがそう言った途端に、また、タケルさんのDターミナルにメールが届きました。

「今度はなんだぎゃー?」

「こら。ウパモン。静かにして下さい」

ここはお店の前ですし、誰かに聞かれてしまったら、大変なことになります。


「ごめん。伊織君。先行ってて」

「え?」

「ヒカリちゃんからでね。貸した本にあったしおり、返すの忘れてたからって」

「あ、はい」

「ごめんね。なるべく早く行くから。光子朗さんにも、そう伝えといて」

そう言うとタケルさんは、元来た道を走っていきました。




それだけなら、特にこれといって取り上げる必要もない、ごく普通のことなんですが、

次の日、いつものように冒険をし終わった後、ヒカリさんが気になることを言ったんです。



「はい。これ」

「あ、ありがとう」

今日は、ヒカリさんがタケルさんに本を貸しているようです。

…いつものように大輔さんは、それを妬むような目で見ています。

「返すのは、今までと同じで、いつでも良いからね」

「うん。ありがとね」

「いつでも、ですか?」

思わず僕が口を挟むと、タケルさんはちょっと申し訳なさそうな顔で、小さく言った。

「うん。本当は、昨日のしおりも、あの時すぐに行かなくても良かったんだ」

「え…?」

昨日は結局、タケルさんは光子郎さんの家に遅刻してしまいました。

ただ、逆算で考えてみると、ヒカリさんと会っていた時間は、1分にも満たないはず。


「ごめんね。伊織君。でも、たった1分でも、会いたかったんだ」

「みんなお疲れー。あたし、今日も店番だから帰らないと」

京さんの声が聞こえ、ヒカリさん、大輔さんもそれに続いて、パソコンルームを出ていきました。

「行こう。伊織君」

タケルさんに言われて、僕もみんなのあとをついていきました。


ただ、やはり納得がいきませんでした。

約束に遅れてまで、会いたいという思い。

確かに、好きな人に一目でも会いたい、という思いがある、とは聞いたことがあります。

でもそれが、小学生である僕たちに、当てはまるとはどうしても思えません。

「どうしたんだぎゃー?伊織ぃ」

「あ、え?」

「何か難しい顔してただぎゃー。今度は何を考えてたんだぎゃー?」

「……」

ウパモンに聞いても、納得できる答えが返ってくるとは、考えにくいですし、

ここは黙っていようかとも思いましたが、ウパモンがあまりにも心配そうな目で見てくるので、

少し聞いてみることにしました。


「タケルさんは、ヒカリさんのことを、どう思われていると、ウパモンは思いますか?」

「…どうって言われても、おいらにはよくわからんだぎゃー」

「そうですか」

元々、聞いても意味はないと思ってましたが、やはり少し落ち込みます。

「うわ。やだもー雨ぇ?」

京さんの声に顔を上げてみると、昇降口の向こうで、音を立てて雨が降っていました。

「げえ。俺傘持ってきてねえよ」

「え、じゃあぬれて帰るの?」

「大丈夫よチビモン。私のを貸してあげるから」

はい。と、ヒカリさんがご自分の傘を大輔さんに渡しました。

「ヒ、ヒカリちゃ〜ん」

「あ、ありがと!」

目を輝かせて、大輔さん達はお礼を言っています。でも、そうなると…。

「ヒカリちゃんは?傘、どうするの?」

僕が言うよりも先に、京さんが聞きました。

「あ、私は良いんです」

そう言うとヒカリさんは、雨の中へと歩き出しました。

「え?ぬれちゃうよー?」

「私、雨好きなんです。こうやって濡れてると、何かが洗い流せる気がして…」

ヒカリさんの言葉に、僕たちは少し固まりました。


暗く、切ない言い方。

ヒカリさんは、僕たちとは違う、何か独特のものを持っています。

どうすれば、ヒカリさんのためになるのでしょう。

僕たちに、何が出来るのでしょうか…。



「洗い流すのも良いけど、あんまり濡れてると、体に良くないよ」

タケルさんがヒカリさんを、ご自分がさしている傘に入れ、

ヒカリさんの手を傘の柄に握らせて、言いました。

ヒカリさんは、少し考えるように顔をうつむけましたが、

「そうだね」と言って、顔を上げてにっこりと微笑みました。

「帰ろう。送るよ」

そう言うとタケルさんは、ヒカリさんの手の上から傘の柄を握り、歩き出しました。




「って、おい!タケル!お前んち逆方向だろーーー!!!?」

硬直状態がとけて、大輔さんが傘をさして走り出しました。

「あ、ってちょっとみんなー!」

「はい。京さん」

僕は、本当は一番急いでいたはずの京さんに、折り畳みの傘を手渡しました。

「わ!伊織ビンゴ!サンキュー☆」

京さんは、急いで傘をさし、僕を入れて走り出しました。

「待ってよみんなー」


そう叫ぶ京さんをよそに、僕はタケルさん達を見て、わかったような気がしました。

もっとも、僕がそう思うのは、おこがましいとは思いますが。


──好きな人に一目でも会いたい、という想いは、年齢とは関係ないんですね。──





戻る

ふう〜。ガルン様、お待たせいたしました!!遅れました!!927番キリリクの「伊織視点のタケヒカ小学生ver.」です!
う〜。短い気がします…。しかも、何か話が分からない〜…。
とりあえず、伊織はタケヒカの精神年齢の高さゆえに出た、雰囲気を察知して納得したというか…。
すみません。このような意味不明なもので…。しかも、これでは光子郎とあまり変わらない気がしますし…。そもそも作文かって感じです。
く〜。まだまだ精進あるのみです…。(汗)
それでは、このような駄文&短文で申し訳ありませんが、
927番ゲッターの ガルン様に、これを捧げます。
リクエスト、ありがとうございました!!!

作成・掲載日:2006/06/25