時が経って、時が経って、1人で歩いていると思い込んでいた。


『いつかの“ひ”』


部屋を片付けていたら、小さな頃の写真が出てきた。
葉書にプリントされた、手作りの暑中見舞い。
写真の中の僕は、手に持ったひまわりのように笑ってる。
正直、なんだか照れくさい。
ポストに投函されていなくて良かったと、今は思う。

でも、この時の僕は、出さなかったことを、ひどく後悔したんだ。


あの頃も、僕の家族は離ればなれで、あの頃も、僕は“いつかの日”を夢見ていた。
遠くにいる父と兄に、少しでも自分の成長を伝えたくて。
初めてプリントしたその葉書を、自慢げに送ろうとしてた。

「1人で出来たよ!」 あの頃の声が聞こえる気がする。
恥ずかしいほど可愛らしい声と笑顔。自分じゃないみたいなあの頃。
誰かと比較しては落ち込んで、背伸びしては転んでいた。
そして、それでも泣きながら立ち上がった。

そして、僕は泣かなくなっていった。
強く、なっていった。

・・・そう、思っていた。


大きくなるに連れて、大切なものがわかっていって、大切なものが増えていった。
色んな気持ちを知って、色んな記憶を忘れないように心掛けた。
自分でもわかるほど、日に日に成長していた。
それでも、気が付かなかった。
間違いってものは、いつも遅れてやってくる。
気付いた頃には、時間は戻らないんだ。

小さな僕は、気付けなかった。
あの日の、母さんの様子に。
あの時の、兄さんの言葉に。
いや、気付いたとしても、あの頃の僕に、一体何が出来ただろう。

そして、今の僕には、何が出来るのだろう。


結局何も変わっていないのかも知れない。
あの頃のまま、僕らは別々に過ごしているのだから。
これが当たり前とは思いたくない。
“普通”の波には乗りたくない。

だから、もっともっと、強く大きくなりたい。
守りたいものを守り、誰かを引っ張れるような頼れる存在に。
やりたいこと、僕に出来ることを、全部出来るような、
いつかのヒーロー像に、近づけるように。

そのためにも。
周りを見て、自分を見て、先に進もう。
後悔なんか沢山あるけど、これから先も、沢山するだろうけれど。

あの時言いそびれた言葉、小さな僕で「ごめんね」
今だから思える言葉、小さな僕に「ありがとう」

いつか全部言えるように。
いつか光り輝く世界に辿り着けるように。

泣く暇なんか無いくらい、思いっ切り走って。
僕だけの道を見つけて造って、真っ直ぐに頑張って。


あの頃の僕みたいに。
太陽を目指して走るだけ。

今、僕の陽はどこに──。



急に部屋の片付けを始めたのは、差し迫った問題からの現実逃避。
机の上に置かれたままの、『進路希望調査』のプリント。

「希望、か…」
いつかの光のために、僕は、机に向かった。





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遅れてごめんどころじゃなく今更でごめんなさいです;;
初メール2周年記念作です。ほんと遅くなってゴメン・・・;;
しかもこんな出来で更にすみません。何が言いたいのか微妙です。記念作品として微妙です;
とりあえず、漠然としたイメージと勢いだけで進めた感があります…。
細かい設定とか背景とかなにも考えてませんでしたし…。
一応、ヒナちゃんに頂いた絵のイメージからなんですが…
うん、私も書きたいものを書いただけってことで…。(何)
えっと、とにかく、またこれからもよろしくです!

作成・掲載日:2008/12/16