小さい頃から、誰かに迷惑をかけたくなかった。

負担をかけたくなかった。

故に、いつも1人でなんとかしていた。

人に頼ることは、あまりしなかった。



『甘え知らず』



風邪で寝込んで2日目。

食欲も戻りつつある夕方5時。

目が覚めると、美味しそうな匂いが漂ってきた。

つられるように台所まで行ってみれば、そこにいたのは母さんではなく、

泉だった。

「…夢?」

思わず口をついて出た。なんでここに彼女が?

「あ、起きた?おじゃましてまーす」

料理の手を止め、こっちを向いての笑顔。

明るさを振りまき、見た人を元気にする。

「泉…なんでうちに?」

あまりにも普通にうちの台所に馴染んでいて、やっぱり驚く。

「輝一が風邪引いたって聞いたから、看病しに来たの」

心配してきた、というよりはどこか嬉しそうな顔。

「それで、わざわざ来てくれたの?」

でも、その表情に疑問を持つよりも、笑顔を見ることのうれしさが優先される。

「だって、輝一の家って、お母さん忙しいんでしょ?
だから、とりあえずスープ作って、あと、夜ご飯のスパゲッティも」

「そんな、悪いよ」

確かに、母さんに迷惑かけたくはないけど、かといって泉に任せるのも…。

「気にしないで。私が好きでやってることなんだから、ね?」

うっ…「ね?」って言われるの、どうも弱いんだよなあ…;

「そう言われると…」

「決まり!とにかく、輝一はまだ寝てた方が良いよ」

「…うん…」

考えてみれば、ここまで料理とかしてもらって、今更帰れとは言えないし、そもそも、言えない。

結局、渋々ながら頷いて、部屋に戻ることにした。


「もっと、甘えて良いんだよ?」

泉に背を向け歩き出したとき、ぽそりと、聞こえた。

「1人でも平気かもしれないけど、でも、誰かと一緒にいて、甘えた方が、嬉しいし楽しいよ」

…甘えた方が、嬉しいし楽しい。

「私は、輝一に甘えてほしいなあ。いつも、助けてもらって、私からは何もしてないし」

「少しは、輝一の役に立ちたい」


「…ありがとう」

少しの沈黙のあと、呟くようにして、言った。

甘えることは、結果としてその人に迷惑をかけると思っていた。

でも、甘えずに1人でいることは、想ってくれてる人から見ると、

寂しくて悲しいことなのかも知れない。


「あのさあ泉…家の人には、俺が謝るからさ…」

部屋を出る前に、泉の方を振り返って、言った。


「今日は、なるべく、うちに居てくれないかな?」


泉の答えは、満面の、笑顔だった。





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初書き一泉です。フロは2年前の夏にレンタルで見たのが最後です。
泉ちゃんのキャラがわからんかった…!!(汗)
ってか、輝一のキャラすらもよくわからんというかなんというか…;
しかも、始めは全然違う話でした。結構前から浮かんでたネタでした。
しかし、どうにも進まないでいたら、急にスパゲッティが食べたくなってこの話が思い浮かんだという。(何)
そして結果がこんな話。ああもう読み返してみれば駄文短文やっぱり駄文。ってか本当にこれキャラがおかしい。
むしろ構成がおかしい。そんでもって、泉の笑顔については絶対輝一は愛のフィルターかかってる。(笑)
なんかもうとんでもない話ですが、こんなでよろしければお祭り参加です…。
では、一泉記念日を祝って…。乾杯!(笑)

作成・掲載日:2006/11/23