『昼下がりの幸福』



「ほら!動かない!」

ある日の京都。

あたたかな日差しの下、縁側に腰を下ろしている少年に対し、少女は怒鳴った。

「耳元で怒鳴るなよ!!!」

振り返り、怒鳴り返す少年。

「ああもうちゃんと前を向いてて下さい!!」

少女は、ヘアブラシを持ったまま、少年に渇を送る。

「だいたいあなたは、どうしてこうも髪をぼさぼさとしておくのですか!!」

声を荒げながら、しかし、手は丁寧に少年の髪をとかしていた。

「どうしてって…」

「前はもう少しちゃんとしておりましたのに」

困惑し黙り込む少年をよそに、「だいたいあなたはいつもだらしがなくて…」と少女は説教を始めた。


どうしてか。そう聞かれれば、答えられないことはない。

髪の質的には、昔はぼさぼさとしていたものの、今ではもうストレートになっていた。

だが、昨年の兄のように、わざと立てていた。…もっとも、髪の量的に、立てると言うよりもぼさぼさになってしまうのだが。

では、なぜ立てているのか。

それはもちろん、社長になったことも影響しているが、それよりももっと、切なく小さなモノがあった。


昔のように。


まだ髪がぼさぼさとしていた頃のように。

平穏で楽しかった日々のように。

これからも過ごせますように。

取り戻せないすぎた時間の分まで。

あの時と同じ気持ち、にはなれないけれど。

平和で、幸せになれますように。


「ふう。終わりましたよ」

少女の声に、我に返った少年は、差し出された鏡を見て、驚いた。

完璧に直されている。

「ずいぶんと時間がかかりましたね…。これからはもう少しきちんとするのですよ」

きちんと。

まあ、何もしなければ、今までのような髪型にはなる。

ただ、幸せの願掛けはなくなるが。

「聞いているのですか!!?」

鏡をひったくり、少年の顔に向かい、叱る少女。

いつもいつも。

喧嘩の繰り返し。

ただ、幸せだけど。


「なあ、ナズナ」

「…なんですか」

「あんまり怒ると、眉間に皺、増えるぞ」

「!!!あ、あなたのせいでしょう!?」

嫌味を言えて。

一緒にいて、安心というか楽しいというか、不思議な幸福感。

昔とは違うけど、これもまた幸せ。

昔を取り戻すことを考えるより、

今、これからを、楽しもう。



次の日から、少年は元通りストレートな髪型に戻した。

だが、少年はふと思うことがあった。

「これから、もう髪とかしてもらえないんだな」

と…。


たまの後悔も、これまた幸せなり。





戻る

はい。なんだったのでしょうか?(笑)
いえね、まえに陰陽の感想を読んでまして、ふと思いついたネタです。
むーん。なんだかなあー。ソーマの嫌味、もう少し良いの思いつけばなあ…。
ていうか、ユーマの髪型、あれってやっぱり意図的かななんて思ったり。
だって、切るだけでああストレートにはならないでしょ。(笑)
あー。ナズナにソーマの名前、呼ばせられなかったな…。
っていうか、全体的に微妙。。。
あー!やっぱり文章力が!!もっと精進しないと…。
・・・しかし、久々の陰陽駄文。ほんと、駄文。ビリから2,3番目くらいでしょうか。

作成・掲載日:2006/07/22